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読書感想文アーカイブ 阿佐田哲也


■ 麻雀放浪記1 青春編

 うーん、シリーズの中では一番微妙。  まあ、正直多少飽きてきたってのもあるが、なにより、この巻は一巻なだけに、 麻雀の占めるウェイトが大きい。ぶっちゃけ、麻雀の部分はわりと適当に流してい たので、そうなるとアレですね。  ただ、まあ、面白い。ちょっとドサ健がDQN過ぎるかなって気はする。

■ 麻雀放浪記2 風雲編 

 麻雀で放浪する話。長編。  こ、濃いい……  文章は軽妙すぎるほどに軽く、しかし中身は特濃。  いや、しかしこれは上質のエンターテイメントだ。キャラの立ち方が尋常じゃな い。全員ろくでなし。そしていい男。色男でも二枚目でもないが、むしろ不細工だ が、ウホッ、いい男。騙し騙されの斬った張った、詐欺師の集団のくせにカラッと している。もう意味がわからん。  それにしても、主人公がとことん負ける話だ。いや、最終的には勝ってるみたい なんだが、勝ったあたりの描写は非常にうすいため、印象がない。よって負けっぱ なしのように聞こえる。そこがよい。おっさんの昔の自慢話みたいにならなくて。  二巻から読んでも支障がなかったのもすごいっちゃあすごい。まあ、基本的なキ ャラや設定はあらかじめ知っていたっていうのもあるが。  まあ、いわゆる傑作でしょうか?  それにしても、マガジンの「哲也」は、この作品のどこをどういじってどう解釈 すればあんな作品になるのであろうか? 謎は尽きぬ。

■ 麻雀放浪記3 激闘編

 いや、良かった。  やはりこれは新撰組のような「最後の侍」の物語なのだな。ことに最後、主人公 の技術、実力が、刃物と暴力に屈するくだりは、剣術の名人が鉄砲の前になす術も なく倒れる様にも似て、哀しい。時代は変わり、純粋な賭博師なんてものの存在し ない時代になった。その世の中で、博打の中に身を置きたい、という思い。  最後、博打をはじめるきっかけとなったチン六と再会し、博打の中に身を置くた めだけに安いレートでチンチロリンし続けるくだりは、ちょっといい話。

■ 麻雀放浪記4 番外編

 うーむ、疲れるなあ。  李億春というキャラの立ち方が壮絶だ。  イカサマをやると広言してはばからないし、指は全部詰められてるし、バクチで 負けたら、殺さば殺せと身を投げ出す。玄人同士の身をすり減らすような麻雀だけ を求める姿は、男らしいと同時に悲しく情けない。  ドサ健も良い。  しかし一番面白かったのは、主人公がカタギになった理由。唐辛子中毒って、な んだそりゃ? 実体験なのかフィクションなのかわからんが、いずれにしろ素晴ら しい発想だ。  ただ、まあ、番外編だなって感じはする。  この話は「最後の侍」の話なのかな、と思った。

■ 外伝・麻雀放浪記

 短編集。ギャンブル小説。  いつものアレですが、特徴としては比較的男と女の話が多かったかな。  わりと面白かった。やっぱりエッセイよりも小説の方が良い。  印象的な文章もいくつかあり、特に「はじめは阿呆な奴だと思った(中略)何故 そうなったのか、きまりきまった順序をふんだように離れがたい思いがきた」とい うのに考えさせられた。愛情とはつねに不条理であるくせに、ありきたりな順番で やってくる。  ダメな女はダメな男にひっかかる。ダメな部分にひかれる。存外、同姓異性を問 わず付き合いってやつは、優しいからカッコいいから趣味が合うから良い奴だから とかそんなんではなく、お互いのダメな部分同士が捨て難くてつながっていたりす る。というような微妙な日本語を考えたくなるような、ダメ人間のお話でしたと さ。

■ ドサ健バクチ地獄・上

 こ、濃いいなあ……  鬼濃だ。なんだこれは。  破滅上等の博打博打博打。  金をドブに捨てたいとしか見えない行為の連発。あらゆる人間が借金借金で首が まわらなくなり、それでもどうにかこうにか金を工面してはまたバクチして一瞬で スる。賭場の主催側も含めて、どう見ても誰も得しているように見えないのがすご い。ゴミクズのような人間関係。  西原理恵子の「まぁじゃん放浪記」は、元ネタからは遠いんだろうなとわりと思 っていたが、そうでもなかった。麻雀放浪記はともかく、この話と「まあじゃん〜 〜」は実はあまり大差ないかもしれん。素人には大嘘ばっか教えてカモろうとする し、賭場にある金は全部自分の金だと思い込むあつかましさは両作の登場人物全員 に共通している。ことにバクチが麻雀から別のもの(チンチロリンや手ホンビキ) にランクアップしてから、壮絶な勢いで破滅していくのが同じ。なんたって新入社 員の月給が2万の時代に、一張り五万からなんだから、そりゃあ破滅もする。  傑作だと思うが、濃すぎるし疲れる。そんな感じ。

中間総括

正直な所、もうちっとばかり飽きた。 感動したりするような話ではないため、読後感があまりよろしくないのも次に手が伸びに くい要因。かといってこういう話で安易に感動させようとされたりしたら、非常に興醒めなんだが。  いずれにせよ、麻雀放浪記は評判どおりの傑作。もう少し、カッコつけた話かと 思っていたんだが、自覚的なろくでなしの話で、そこが良かったのう。「ドサ健ばく ち地獄」の下巻が図書館にも古本屋にも見つからずちょっと鬱。

■ ドサ健ばくち地獄・下 

 長編ピカレスクロマン、だそうです。  やっとこ下巻が見つかったー。  が、うーん、微妙。  いや、悪くはなかったんだがな、最後の方、結局は賭博師同士の戦いになって、 結局麻雀勝負だってのが残念。玄人ぶった一般人が泥沼にはまって破滅していく姿 がいかったので、最後の方は麻雀放浪記と同じノリで残念。殿下とかが途中から出 番がなくなるのもがのう。  まあ、上下を通してみると、普通に良作。ただ慣れのせいか上巻ほど嫌な汗が流 れなかった。オチ自体は、まあ順当なところ。それなりの終わり方。

■ ああ勝負師

 エッセイのようなむにゃむにゃ。  うーん。エッセイだなあ。  世の中には色んなばくち打ちがいて、みんなろくでなしなんだなあ、という話。  感想っつっても、エッセイなので、俺なりにそれなりに。  変なハゲ親父でしたよ、という話。

■ 牌の魔術師

 麻雀小説。短編集。  十ページ前後の話ばかりで、ちょくちょく拾い読みして、しかも同作者の似たよ うなエッセイ「雀鬼五十番勝負」も同時にちょくちょく読んでたので、どっちがど っちの収録作品だかわかんなくなっちった。  えーと、まあ、基本的には麻雀放浪記の一章程度にあたる小話ばかりで、いつも のごとく、アレものでアレもの。  イカサマのやり方とか玄人のやり口には感心するしそれなりに面白いが、メイン となる話がないので、いまいち残るものがない。  面白いことには面白いんだが、足りない。が、どうもわしは根本的に麻雀がそん なには好きではないので正当に評価できないかのう。

■ 雀鬼五十番勝負

 麻雀エッセイ。題名通り五十本のってる。  で、こっちはエッセイ。中身は似たようなもの。  どうもこの人の文章の面白いところは、この人のもつ道徳観、倫理観というもの が一般人とずれているところにあると思う。  善人でも悪人でもなく、熱血漢でも冷血漢でもなく、大嘘吐きのくせに義を解 し、無法者でありながら情を知り、そのくせ仲間を陥れることを屁とも思っていな い。  金の亡者でありながら、札束を洟っ紙程度にしか思っていない、という賭博師の 矛盾した人格ゆえであろうか、とにかくなにかがずれている。八割がたは理解でき るのに、残り二割がずれている。それが作品に深みを与えている……のかなあ。と か適当に云ってみたり。  ま、簡単にいうと変な人なんだな。  相撲取りルールが面白かった。役がいっさいないの。考えるのが面倒くさいか ら。で、代わりにドラがやたらいっぱいあるの。で、ドラの数だけで点数決める の。強烈に頭が悪そうで、とてもお相撲さんらしい。で、マジでこんなルールでや ってんのかな? やってそうだな。考えるのめんどくさそうだし。親方に言われた とおりにやっただけっす。 まあ、それなりに面白かった。そして自分がそんなに麻雀は好きでないのを痛感 した。

■ 東一局五十二本場

 麻雀小説。短編集。  いいかげん飽きたかな、と思っていたが、なんの、これは珠玉の短編集だった。  闘牌よりも、賭博師の末路を描いた話を集めたようで、そこが良かった。  放蕩の末、弟をヤクザに売り弟と心中する孝一も、女房の手術代のために十数年 ぶりにしはじめた博打をやめられなくなったダンチも、ばれて逆に利用されている とも知らずに素人イカサマを繰り返し雀荘で野垂れ死んだ茶木先生も、実におろか で、しかし笑えない哀しさがある。  特に最後の茶木先生の話が印象深かった。小学校の恩師と雀荘で再会、しかもド 下手で失笑されカモにされているのにも気づかない状態、というのは、痛い。痛す ぎる。敬礼一つも満足に出来ず校長に怒られる音楽家、と描かれる茶木先生が、ど こをどうして雀荘に流れ着くようになったのか、どう想像しても楽しい話じゃな い。  毎日金を搾り取られ、借金で首が回らなくなり、いかさまがバレて殴られ、心臓 が止まり病院に運ばれ、それでもなお麻雀をやめることができない茶木先生。「麻 雀が不器用で負けてばかりいる間は、音楽家の証拠であるような気がした」という 言葉が重い。授業中に演奏を開始したら悦に入り無我夢中で演奏をしたという彼 が、どんな日常生活を送っていたのかは一切かかれていない。先生が生涯雀荘にま で持ち歩いたヴァイオリンケースを蹴飛ばして終わる幕切れは秀逸。  

■ 黄金の腕

 短編集。麻雀小説。  こうも立て続けに読むとさすがに飽きるな。  悪くないが取り立てて好きな話はなかった。いつもの。

■ ギャンブル党狼派

 いつもの短編集。全体にただよう微妙なホモくささはなに? 「スイギン松」は、いつもの味わい。まあまあかな。 「耳の家みみ子」どうやら当時一番こわいバクチはホンビキらしい。こわこわ。 「シュウシャインの周坊」いっちゃんホモくさい。友達が欲しくて、15のガキを 弟子にして、自分一人を頼りにするようにしておきながら、それを平気で陥れ、置 いて逃げる主人公の心理に対してはあまり語られていない、というか当然のように 書かれているが、いつもこの辺の心理がわからない。わからないが、説得力はある 不思議。それが作者の素の考えであり、魅力なんだろうな。困った時には両親だけ に迷惑をかけ時には殴りもする周坊が、勝負に負けて主人公を刺し、刺されたほう が「あいつはおれを肉親のように思ってくれているのかな」というラストシーン は、なんかわからんがホモくさくてそして泣ける。 「ズボンで着陸」かもる側とかもられる側の友情は、奇妙というほかがなく、しか しそういう人間関係が存在するという説得力が、なぜこんなにあるんだろう。西原 理恵子の「まあじゃんほうろうき」における、ハッポン堂や銀玉親方と西原理恵子 の関係は、まさにこのかもる側とかもられる側の友情であり、ここでもまた以外に も西原理恵子が案外正統に阿佐田哲也とおなじ系譜の世界観で作品を描いていると 思うと興味深い。のか? 「人間競馬」ヒロポンはこわい。とさ。

■ ギャンブル人生論

 いつものギャンブル系エッセイ。  かと思いきや途中に創作がまざり、最終的に小説になっていた。わけわからん。  でもまあ、面白かった。さいごの、ダフ屋と競馬ギャンブルのプロの一騎打ちの 話は普通に面白い。  しかし、この人のエッセイを読んでいつも思うことは、ムツゴロウさん麻雀に命 賭けすぎ。怖いです。いつも出てくるし。ほんとにもう。

■ 怪しい来客簿  (色川武大)

 連作短編集。  泉鏡花賞受賞作だそうですが、筒井康隆の「夢の木坂分岐点」といいこの作品と いい、泉鏡花賞をとるような作品は難しくてよくわからない。きっとぼくは幻想文 学に向いていないのであろう。  さておき結局は阿佐田哲也なので、バクチ抜きのいつものお話といったところ。  まあまあ面白かった話もあった。読んだのがわりと前なので忘れた。

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