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読書感想文アーカイブ その他


■ 殺人鬼の放課後 オムニバス

 恩田陸、小林泰三、新津きよみ、乙一の四人によるミステリーアンソロジー。     

 水晶の夜、翡翠の朝 恩田陸
 なんつうか、一見上手そうに見える下手な人だな。なんつうか、ギムナジウム物 で「恐るべき子供たち」路線のような気がしないでもないんだが、とりあえず、舞 台がどこら辺の国かまったくわからんので、困ったり困らなかったり。  美貌の主人公ヨハンの魔性を、作者が実感として捕らえていない感じでつ。美少 年は難しいのら。   

還ってきた少女 新津きよみ
 びっくりするほど凡作!  びっくりするほど凡作!  びっくりするほど凡作!

■ 蚊コレクション オムニバス

 ゲーム「蚊」のオムニバス小説集。  どうでもいいけど、なんでこんな企画に、こんないい顔ぶれ使ってるんだ? 大 御所はいないけど、SFマガジンっほいやつが多いぞ?     

 赤い家 田中啓文
 テンションの高い駄洒落の連発は、まあ好き好きとして、突拍子のない設定を平 気でいきなりもってくる手腕は筒井康隆みたいで悪くない。けど、なにか残るもの がないのは筒井康隆のもつブラックさが欠片もないからか。あんがいいい奴なのか もしれない。それが中途半端にしているような。      

虫文 牧野修
 この作者、また設定はいいなあ。  けど、内容は微妙だなあ。  どうしたもんだろ?  設定的には良作。  総合的には凡作といったところか。

■ 血の12幻想

  アンソロジーだ。テーマは「血」?     

早船の死 菊地秀行
 デタラメで意味がわからずテンションはある。  まあ、つまり菊地秀行なんだろうが……もにょもにょ。  まあ、なんか思ったよりはまっとうな作家なんだな、菊地秀行って。  ただ、なんだこの文章は。下手とか上手いじゃなくてなんだこりは?  基本的には、四角関係の高校生の話で、最終的に大人になることを拒否して自殺 する若者と生き残って大人になってしまう人間、主人公はその取り残された者、と いうわけなんだが。わかりづれえええ。なんだこりは。わかりづれえええ。  いつだって、行く者よりも、残された者のほうが寂しいとさ。(関係ない話)   

夕焼け小焼け 柴田よしき
 だりだおまいは? 柴田。だりだ。  と思いながらなんとなく読んだわけだが、おや、なかなかいい。  女の金で会社を興して、友人に金を持ち逃げされて倒産して、勢いで東京に出て やくざの経営するカジノでディーラーをやって、ちょっと金回りが良くなって調子 に乗ってるダメ男。  その男から離れることが出来ず、水商売をしながらボロアパートに住み、別のヤ クザにべた惚れしてるダメ女。
 結局、抗争に巻き込まれて二人とも殺されて、というだけの話なんだが、これは なかなかにポイント高い。栗本薫の初期短編「探偵 悲しきチェイサー」や「イミ テーションゴールド」とかを思い出した。都会の闇におぼれるようにしか生きられ ない、ダメな男や女。かれらの発する、田舎じみた泥臭さ。そんな感じ。  機会があれば、この人の長編も読んでみるか。   

血の汗流せ 田中啓文
 ダジャレオンパレードの吸血鬼コメディ。この作者いつもダジャレだな。  意外によかった。以前、同作者の話を「ブラックさがない」とくさした記憶があ るが、今回は不謹慎でよかった。筒井康隆チックに不謹慎だった。特に終盤、主人 公の星吸魔が、自慢の剛速球でスタンド中の客の頭をパッカンパッカン割りまく り、フルスイングで首をホームランして、球場中を血の海にするあたりは、書き口 スカッと爽快で実に不謹慎だった。がんばって筒井康隆の不謹慎路線を継承してく ださい。

■ 暗黒のメルヘン  渋澤龍彦・編

 なんかアレ系のアンソロ。むつかしいでつ。

  桜の森の満開の下 坂口安吾
 こんな有名な作品をいままで読んだことのなかった自分をまずは褒め称えたい。  で、内容は、えーと……桜の森の満開の下だったなあ、とか。  まあ、けっこうおもろかった。でも安吾ちゃんの文章力って微妙だなって思いま した。いや、もちろんうまい方向なんだけどさ。なんか……微妙だなって。まあ、 だから文学史での立場も微妙なんだけどな! きっと。なんで野田秀樹は安吾ちゃ ん大好きなんだろ?

     仲間 三島由紀夫
 えーと……ポーの一族?  由紀夫ちゃんは乙女チックだよね?   きっと夢見がちなドリーマーだったにちがいあるまい。  文章がうまくても、夢見すぎると大変なことになるよ、ということ、由紀夫ちゃ んは教えてくれた。ありがとう、由紀夫ちゃん。本当にありがとう。でもホモなの は勘弁な?

     瓶詰めの地獄 夢野久作
 えーと、読んだことあったわ、そういや。  ゆめきゅリズム炸裂してたよ、いつも通り。

■ 雨かもしれない 〜厄介な連中1〜 柏枝真郷

 ホモホモホモホモ。  やおいミステリーシリーズ。
 そういや最近JUNEもの読んでねえなあ、と思って読んでみた。この作者の 「デスペラード」シリーズは、なかなかによかったんだが、だんだん物語の行き先 がない、というか、もうあのシリーズで云うべきことが無くなってしまった、作者 があの世界を切実には必要としなくなった、という感があって、シリーズ自体が行 き詰まっている気がしないでもないまま、止まっているにゃあ。

 話しはずれるが、そもそも作家(小説家でも漫画家でも、創作活動をする職業なら なんでもいいが)というのは、少なくともおれの好きになる作家というのは、そもそ も自分が社会、世界に対してうまくいかない、まわりの考え方、行動、生き方に同 調できない、という人種で、さらにそのことに対する憤り、情けなさ、許せなさ、 切なさ、なんだっていい、要するに、自分が世界と折り合いがつかないことに対す る感情を吐き出して作品をつくっているようなところがあって、それがかき続ける うちに自己に対しても他者に対しても許せるようになっていき、また社会的に作品 が認められていくうちに、精神が安定していき、最終的に作品を作ることに対する 内的必然が失われていって、で無駄にテクニックだけの作品がゴロゴロゴロゴロと うわあもうやめよう栗本へんへはそっしてやってくれ。
 で、特にこの人は中島梓の小説道場門弟の中でも、そういう傾向の強い人で、実 にだんだんと人格が丸くなっていき無駄にギスギスしていた文章が穏やかになり、 そして内的必然を失って……失ってとか云うな!  思いつきと勢いで駄文を書くのはやめて、感想に移る。

 なんか、ちょっと笑ってしまった。いや、笑う作品ではないんだが……設定がわ りと懐かしい感じにベタなJUNEものだからさ。  人付き合いがうまくいかず、親兄弟にも疎まれ、自殺未遂常習者のイラストレー ターと、あまりに猟奇的過ぎて理解者のいない真性サドで人間嫌いの貧乏作家。他 人に心を開かない二人は、お互いにだけは……という例の奴で、このコンビが事件 に巻き込まれて解決していくっていう、なんていうかもうキャラもスタイルもわか りやすすぎるからたまらない。

 でもまあ、完成度は悪くない。生活感だな。女性作家は全般的に生活感を出すの がうまいが、これもまた然り。特に貴族のような容貌で、なにごとにつけうるさそ うな遠野が、貧乏ゆえに雨漏りの家に住みに三級品のリーバイスを穿き生協COO Pで買い物をしている、という細かいところがきちんとしている。

 かつてだれかSF作家が(小松左京だっけか?)松本零士の漫画の解説で「SF 作家は四畳半の天井に宇宙を見る」みたいなことを書いていて(松本零士は体現し すぎだと思うが)、最近ふとそれが心に落ちてきた。そう、SFってのは、ヒキコ モリの物語だよな。貧乏暮らしをして、彼女もなく、仕事もなく、友達も少なく、 せんべい布団に横たわり、視線をしみが浮かんだ天井に向けながら、その思いは遥 か億万光年銀河の彼方へ向けられている、とそういう情景が、一番SFに似合う。 根暗なんだな、SFは。「星界の紋章」という作品では、アーヴ語と云う架空の言 語がそこかしこに使われているが、この作者、作品を書き出す前からこの言語を考 え続けていて、言語学にあてはめられ考え尽くされたこの言語体系と云うものは実 に大学ノート数冊分に及ぶそうで、当然デビューしておらず、だれにも見せるあて のない架空の言語を何年もノートに書き溜める作者の姿というものはうわあ気持ち 悪い、オタクそのものであって、この話を聞いたときに「ああ、この人は本物のS Fものなんだな」と感じた。つまり、SFってのはそういうものなんだな。吾妻し でおの作品でよくSF者が迫害されているギャグがあって、「いやそれはないだろ う」とか思ったが、いま思うとなんか納得するものがあって、やっぱSFするやつ なんてのは気持ち悪いから迫害されがちだし、なによりそういう奴は被害者意識が 強いからああいう風に「おおおれは迫害されたおれは迫害された」と思っても仕方 がないんじゃないでしょうかどうでしょうか?

 で、話がやっと本筋に入ると、SF者が「四畳半の天井に宇宙を見る」のなら (星を見る人みたいやね)JUNE者は「スーパーのチラシにボードレールの誌を 見る」とでも云おうか(すまん、おれよくボードレールのことわかってない)全 体、男よりも女の方が生活はしっかりしている。あくまで一般的にであって「片付 けられない女」とかの例外は除く。
例えば、男の一人暮らしとかの食の一般イメー ジはカップラーメンとかコンビニ弁当だと思う。男は手間を惜しみそれで済ます が、これはあまりコストパフォーマンス的にも栄養学的にも良くない。自活した方 が安くうまく栄養もあるものがつくれる。そしてより安くを求めれば自然にスーパ ーのチラシへと行く。「ああ、こっちのスーパーの方が卵が10円安いわ」とか 「明日はトイレットペーパーが安売りだから買いだめしなきゃ」とか、考える。
考 えながら、ふと心が空想の世界に飛ぶ。スーパーの行き帰りにある並木道にヨーロ ッパの街並みに見、ビスケットの缶に「ビスキュイを頂戴」とつまむ美少年の指を 見、枯れて舞う木の葉の向こうに退廃貴族の屋敷が見える(ところで、いま、自分 のイメージの貧困さにとても驚いています) そして買い物を無事におえた彼女は冷 蔵庫に戦利品を詰め込みながら、今夜の晩御飯はどうしようと思い、ふとさきほど 垣間見た幻を思い出してめくったチラシの余白にさらさらと散文的な文章を書く。  おそろしくわかりにくくて自分でもビックリだが、そういうことなのだ(どうい うことだ)。

 JUNEとは、基本的に主婦の物語だ。少なくとも、主婦的な感性を持った人間 の物語だ。あ、いや、待てよ。主婦的な感性を持ちながら主婦ではないもの、の物 語なのか?そうなのか? そういうことにしとこう。思いつきで。
 だから。
 すぐれたJUNE作品というのは、まあわりと耽美系に限定して考えているが、 基本はうわっついた世界のわりに、なぜか根底の生活感、なにを食ってなにを着て というのが非常に明確にイメージできる。  中途半端なところだが、とてもだるくなったし感想文を大きく逸脱してきたし、 テンションがとても下がったのでここで止めます。  この作品自体は、まあまあでした。普通。

■ 夏のロケット 川端裕人

 現代もの。青春小説? ていうかロケット小説。
 高校時代、小型ロケット作りに夢中になってた六人グループが、三十を過ぎて再 結集、ふたたび今度は本物の有人ロケットの開発を目指す。というストーリー。 「だって、そこに火星があるんだ。それで十分じゃないか」といった台詞にあらわ れるように、根底にあるのはあくまでもロケット、および宇宙に対するロマンチシ ズムとある種のセンチメンタリズム。どこまでも甘く流されていきそうなところ を、打算とビジネスをしっかり描くことによってつなぎとめている。

 ロケットを取り巻く現実や歴史、ロケット製作費用などを、具体的な人名や数字 を出すことによって、すごくリアルにしあげている。きっとすさまじい資料集めや 取材があったのだろう、と容易に想像できる。  文章は、うまくはないが、まずくない。ところどころいい文もあるが、ちょっと 埋没しがちになる。演出が下手なのかもしれん。
 ただ、構成的には、難があるよな。序盤はロケットの説明が多すぎるし、中盤、 主人公のロシア行きは、ストーリー的にはあんまりいらない(けど一番うまく書けて たのもここなんだが)し、終盤の150ページくらい、実際にロケットをつくりあげ てから発射までは、ちょっと細かいところまで書きすぎていて、リアルといえばリ アルだが、冗長。

 まあ、資料として読んでみたわけだが、その役目はじゅぶんに果たした。作者の 力量も、まずくない。が、文章的にはそんなに読みたい作家ではない。題材の選び 方、捉え方は秀逸なので、題材次第かな。

■ ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹  西尾維新

 え、えーと。ジャンルなんだろ? ライトノベル? それともゴミ小説?  はじめに。これはノベルスで二段組の480ページにならなんとする堂々たる長 編ですが、1時間半くらいで読破しました。久しぶりです、この速度。ていうか、 バイト先に忘れ物で落ちてて、休憩時間に読むものがなかったから読んだんです が、なんていうか、なんていうかなあ。

 えーと、この作者、メフィスト賞出身のアレなんですが、なんていうか、内容は 「清涼院流水ミーツ上遠野浩平」という内容で、つまりなんていうか、その……め ちゃくちゃだ。  まずおおよそかなりの高確率で作者はキモヲタなんですが、その、もういいで す。
 (一応)ミステリーなんですが、街にはスタンド使いがうろちょろしていて、そ れはもうすごい殺し屋だったり名探偵だったり不老不死だったり、いろいろあるん ですが、その辺の能力がなんで存在するのかに関しては、あんまり説明はないみた いです。きっと矢で貫かれたんでしょう。で、まあ、スタンド使いがいっぱいいる 状況でミステリーが成り立つかって云うと、これは、そのなんていうか……  で、まあそのスタンド使いはほとんどが個性豊かな美少女であり、主人公がすむ ぼろアパートにみんなして住んでいたり、その、なんていうか……  とりあえず、これが確信犯なのか天然なのかを知りたい。つまり作者がただのキ モヲタなのかキモヲタをバカにしているのかを(ただのキモヲタなんだろうなあ)

 さて、ストーリーは、わりと意味わかりませんでした。  ストーリーの骨格だけをやるつもりなら、登場人物は現在の三分の一で十分だ し、ページ数に至っては十分の一で結構だと思われます。ようは、十分の九は無駄 なお遊びで、そこを楽しいと思えるかどうかなんだろうが、うーん、それはちょっ と難しい質問ではないでしょうか?

■ 龍の遺跡と黄金の夏 三雲岳斗

 ライトノベルでつか? SF、ミステリ。短編。  駄作。  短編に無駄に設定やキャラを大量投入しているから、ごちゃごちゃするばかり。  シリーズ中の一作としてならともかく、この作品だけ読んでもちっとも面白くな い。  文章は凡庸で、はったりがききすぎている。  設定とアイデアとはったりで勝負しすぎか? 地の文がくそつまらん。  全員がこのレベルなら、「しょせんラノベ」といわれても仕方なし。

■ キノの旅5 時雨沢恵一

 悪くない。悪くないが、狙いが鼻につきすぎる感あり。  コメントしづらいし、うっといのでパス。いい話といえばいい話。キモイといえ ばキモイ。そんな感じ。

■ KAR-MAN〜業の獣〜 梅津祐一

 アクション長編。  ザ・無内容。  設定だけ設定だけ設定だけ。  企画物ですって感じ。  キャラ立てのみ中途半端にうまい。でも中途半端。  この作者、最初に読んだ一冊目が面白かったから既刊の四冊全部目を通したけ ど、だまされただまされただまされた。だまされたよ兄さん。

■ はなひな  阪本良太

 スパダシュ文庫を読み漁ってみよう企画第一弾。  宇宙からロリッコが二匹降ってきてパンチラしたりしながらドタバタしたよ。  というだけの話。  なにも語りようがない。

■ オービタルレディ

 スパダシュ企画第二弾。  案外普通。  普通すぎてなにも言うことがない。  本を投げ捨てたくなる場所はないが、楽しくなる場所もない。  ただ挿絵が歴代でもトップクラスの下手さ。なかなかゴイスー。

■ 悪魔捜査官

 スパダシュ第三弾  案外まっとうな文章力。  その代わり面白要素が皆無。これ。  企画だけで書いちゃった感絶大。  そもそもこういう物で300枚を書かせようという編集部がダメ。  これはどう見ても100枚程度の短編をいくつか重ねた後に、長編に移行するタイプだろ。  おかげでキャラ立ちもストーリーの中身もどっちも薄味。  ちなみにスパダシュを読もう企画はこの段階で飽きました(所要日数二日)

■ 転生 ?

 エログロSF。  ネット小説。  途中まではよかった。  第一部までは良作。

 主人公と「臭ぇ犬」(このネーミングセンスはおもろいな)とマリア。歪んだ友情 関係の三人。  行方不明のマリアを助けるために、虐殺ビデオを販売する会社へと乗り込む主人 公と臭ぇ犬だったが、つかまり、串刺しによるビデオ撮影処刑を宣告される。  三人の過去はどれも壮絶だ。  臭ぇ犬ははげしいいじめの中、ヒキコモリになり、スカトロに興味をもち、母親 に性関係を強要する。それを知らずにストレス発散に臭ぇ犬を説教というなのいじ めをする主人公。その主人公と付き合いながら、両親の借金のために臭ぇ犬をはじ めとした多くの相手に売春をするマリア。  すべてを知った主人公を引き金に、臭ぇ犬は母に刺され、その母はみずから切 腹。マリアは主人公のナイフにより大怪我を負い、父母もろとも家に火をつけ、行 方不明。  ここまでが第一部で、これは良い。

 が、つづく第二部、これはどうにも悪い。  出だしは、まあ悪くない。不浄で禁忌的であやしげな雰囲気はいい。  ウィルスにより世界を滅ぼそうとする父親の静かな狂気も悪くない。  が、全体の四分の三を超えたあたりから、急に展開が早くなる。というか、無茶 苦茶になる。はっきりいって、オチてない。いや、オチじたいはあるんだが、ちっ ともつながってない。どろどろのぐちゃぐちゃの、どうしょうもないやつらと光景 ばかりを描写しておきながら、「おれはこの世界を生きる!」みたいな締め方され てもな。臭ぇ犬とも勝手に和解してるし。終わらせなくちゃいけないから終わらせ た、という感じ。

 あと一山、二山なくちゃ、話としておかしい。  が、久々に珍しいもん見させてもらった気がする。  どうもおれは非常にきちゃない描写に心ひかれるものがあるみたいだな。スカト ロはちっとも理解できないんだが。謎だ。汚濁の果てにある純潔、とでも云おう か、汚れきった先には、なにか綺麗なものがあるような気がする。なんだろ?

■ 木枯らし紋次郎1 赦免花は散った  笹沢佐保

 時代小説。短編集。  そういや時代小説はほとんど読んだことないので(司馬ちゃんは歴史小説) ためしになにか読んでみようと思ったものの、特になにも思いつかない。  こういう時は有名なのを行こうと思い、山田風太郎にしようかと思ったが、 忍者物だしなあ、と考えなおし、池波正太郎に行こうとしつつも、鬼平犯科帳 もちょっと……なんて思ってたら、岡本綺堂と木枯らし紋次郎が残った。
 で、とりあえずこっちにした。ちなみに知らない人に説明するならば、木枯 らし紋次郎とは、三度笠に長脇差の股旅姿、頬に刀傷で口には長い楊枝、キメ 台詞は「あっしには関わりのねえことで」の、かつて中村敦夫が名演した、あ のキャラクターである。ゲームファンには「風来のシレン」の元ネタになった キャラ、と云えばわかりやすいだろう。
 で、なんでこれにしたのかと云うと、吉川晃司が大好きらしいから。  思えば、吉川晃司は最近、三池監督と組んでやたら日本刀を振り回している が、その「日本刀とオレ、カコイイ」幻想はどこからやってきたのか、疑問で あった。  宮本武蔵ではないだろう。吉川晃司のもつイメージは、求道者のそれではな い。同様に、柳生十兵衛あたりもダメだ。かといって、忍者系の忍んでいる感 じもない。じゃあ武将かというと、集団を率いる柄じゃない。そもそも品がな い。品がないので、武士は全滅。月代も嫌いそうだ。規律を守る側という意味 では、同心もダメだ。同様に、新撰組もダメだろう。じゃあ維新志士の、竜馬 や桂、武智あたりの腕利きがイメージかというと、思想なんてもっているキャ ラじゃない。人斬り以蔵あたりの人斬りならば合わなくもないが、彼らはしょ せん飼い犬なので「おれは野良犬」とか思ってるK2幻想に合わない。野良犬 ゆえに正義の味方は好まないので、桃太郎侍なんかもダメだ。
 で、最終的に残ったイメージは、いいところの武家の次男坊か三男坊、いわ ゆる浪人である。親のすねをかじり「おれは本気出せばすごいよ」とか云いな がら、なにもやることはないので飲んだり遊んだりしながらなにもすることな く死ぬ。ピッタリだ。
 しかしこれは真実に近すぎるのでダメだ。もっと幻想に近くなければ。  で、浪人ぽい時代劇のヒーローと云えば、あとは満月殺法の眠狂四郎しか知 らない。実際、パンドーラのPVでは蓬髪の浪人者といった感じで、眠狂四郎 に近いような気がしないでもなかった。

 と、いうことは前々から思っていたわけだが、そんな矢先に「木枯らし紋次 郎が好き」と聞いたので、読んでみたわけだ。  なるほど、これがK2の理想だったわけね。
 基本的に風来坊のヤクザである。  腕は恐ろしいほどに立つ。しかし正式な剣法などではなく、度胸と経験によ る喧嘩剣法である。長脇差は大事にするが、それはあくまでより多くの相手を 斬るために長くつかうためで、名刀を愛しているわけではない。
「自分などこの世に存在してもしなくても同じである」という性根は、徹底し た無表情をつくり、人になにかを頼まれれば「あっしには関わりのねえことで」  クールである。友の身代わりに罪を背負い、島流しにされ、それが仕組まれ た罠であったと後に知っても、つまらぬ男を友とした自分が悪いのだ、とそれ だけで済ます。
 その実、根っこのところでは人の温もりを欲してやまない。無償の信頼を寄 せられることに弱い。だからなにかと事件に巻き込まれる。しかしその結果、 いつも人の思いの冷たさ、世の無情さを目の当たりにする。  短編でありながら、毎回ちょっとしたどんでん返しも用意されており、ミス テリー的な楽しみもできる。話の骨子はワンパターンではあるが、趣向は毎回 変えてあり、飽きさせない。なにより主役に魅力がある。  普通に考えて、ヒットして当然のシリーズである。
 けど、文章が好きじゃないのでもう読まない。やたらいっぱい出てるし。

■ 蝶とヒットラー 久世光彦

 エッセイ。  前に読んだような読んでないような……久世ちゃんのエッセイは適当に開いたペ ージを拾い読みするからね。なにを読んでなにを読んでないのか、すぐわからなく なる。内容もいつも似たようなもんだし。

 しかし、久々に久世ちゃん読んだが、いいなあ、この徘徊具合。暇をもてあまし た枯れきったおじいちゃんが、戦中、戦後あたりを思い出しながら街のあちらこち らをふらふらと徘徊しているちょっと不審なサマがよく出ている。(まあ、実際の 久世ちゃんは年に二冊ぐらい本出すわテレビ製作会社の社長だわたまにドラマの演 出するわ舞台の演出するわで非常にご多忙な人なんだが)個人的に、老人小説の第 一人者として推したい。「聖なる春」と「乱歩」はヒキコモリ老人小説として超・ 傑作。
 しかし、久世ちゃんはナチが大好きだなあ。いつだってナチと天皇ラブだもの な。そのくせ文章が枯れてるから危険な匂いがしないし。  なんか、義眼の話にちょっとグッときた。義眼、いいかもしれない。  そういや、前にどっかで「偽眼(いれめ)のマリア」という小説を読んだなあ。 醜い売春婦の義眼に惚れて追いかける話だったが、あれはなかなか良かった気がす る。で、作者誰だっけ? 

 と思ってネットで調べたら、タイトル「偽眼のマドンナ」だったのね。微妙にち がた。作者は「薔薇と悪魔の詩人」渡辺啓助、「兵隊の死」「可愛そうな姉」で知 られる渡辺温の実兄と、ほうほう。そういやそうだった気もするな。げ、没年20 02年て。享年101歳って……生きてたんかい、アンタ。しかも100歳記念で 本出してるし。弟は28歳で夭折したというのにまあ、ずいぶんと長く生きたもの だにゃあ。まあ、憶えてたら今度なんか読んでみるか。  と、話が脱線したが、久世エッセイは良い。じじくさくて。

■ 海と毒薬  遠藤周作

 えーと、文学でいいのかに? 長編。  なんか川端康成でも買おうとしたら伊豆の踊り子しかなくて、仕方なく隣に目を やったらこれがあったので、この人も有名だし、もうこれでいいや、と投げやりに 買ってきた。
 中身は、えーと、白い巨塔?  いや、面白かったですよ? それなりに。  特に戦中、戦後の雰囲気はいいと思いますよ。人間の描写力も確かだし。ことに 戸田の告白はよかったと思いますよ。  でも、ぼくは、オチが欲しい。  それだけ、ただ、それだけなんだ…… (ところでタイトルにもある毒薬ってなに?)


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