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■ どんどん橋、落ちた 綾辻行人 ミステリー。新本格派。短編集 良作。 久しぶりに綾辻行人の小説を読んだが、うまいな、と思った。赤川次郎的という か、ベストセラー的なうまさを感じた。かぎりなく無味無臭に近く、無駄な文章や 作者の陶酔が感じられないため、読みやすい。状況説明や構成が巧いのも評価でき る。気軽にふと本を読むときに、こういう作家は重宝するんだろうな。オチも読め ず、しかし説得力はある(パズル小説なりの、だが)売れるのがわかる。 が、やっぱり好きにはなれないな。こちらを陶酔させるものがない。 ■ フリークス 綾辻行人 推理というかホラーというか、まあその半々というか。中篇三つ。 んー、まあ、まあ、かな。 「夢魔の手」……まあ、まあ、まあ、なんというか、普通にまあまあまあ。まあ、 そんな感じ。 「409号室の患者」……十年位前に読んだから飛ばした。内容はうろ覚えだが、 そんないい作品じゃなかった気がするし。 「フリークス」……これは、まあ、いい方なんじゃない? 多分。綾辻行人の中途 半端な文章力でなければもっといい作品になっていたかもな。まあ、乱歩チックで 悪くはなかったよ。 ■ 眼球綺たん 綾辻行人 なんかホラー短編が七個くらいはいっていた予感。 なんとも微妙な作品群たちでした。 ていうかつまんなかった。 ■ 復讐の白き荒野 笠井潔 長編ミステリ(スパイ小説) だ、だるい。だるいにゃあ。 評論家であることが足を引っ張っているにゃあ。 この人の作品、元から薀蓄たれ系の話だけど、これはだるかった。謀略によって ソ連の強制収容所に五年間とらわれた青年が、復讐のために脱獄。謀略者を皆殺し に。という筋自体は単純なのに、そこに日ソ関係と諜報戦と、こってりとした右翼 テイストが盛り付けられ、うんざりするくらいに濃くなっております。 まあ濃いのはいいんだが、しかしその濃い設定をストーリーに関係ないんじゃな いかってところまでじっくりと語り尽くしてしまっているために、疲れるし、なに よりキャラが物語に殺されてしまっている。物語のために動かされてしまってい る。だからリアリティはすごくあるのに印象的なキャラが主人公くらいしかいな い。そもそも、主要キャラが基本的に極右なので、はっきりいって感情がまったく 理解出来ない。なんでそんなに天ちゃんラブかなあ?なんせ「神として甦った陛下 は」「白馬に打ちまたがり大元帥として君臨される」だからなあ。皇太子様のAA なんてもう見せらんない。 構成的には、序盤、物語の入りはいい。氷原を渡ってきた死んだはずの男。広大 に広がる白き荒野。番屋守の老人と復讐鬼と化した青年との交情。吹き荒れる吹雪 の中を決然と進む主人公・勲はカッコいかった。 が、その後、都会に出てしまうともう色あせていって、そして中盤にさしかかり 作者が設定を説明するのに必死だなって状態になると、もう眠さだるさはマックス で、ライドオンタイム状態ですよ兄さん(兄さん?)。 が、まあ最後の五十ページくらいは良かった。良かったはず。良かったんじゃな いかなあ。良かったらいいなあ。 じゃあそういうことで。 ■ フォア・フォーズの素数 竹本健治 著者の第二短編集。全13編収録。 〈ボクの死んだ宇宙〉〈熱病のような消失〉〈パセリ・セージ・ローズマリーそ してタイム〉〈蝶の弔い〉は、短編、というより掌編か。詩的な文章ばかり で、はっきり言って意味がわからない。イメージを美しいと思えるかどうか。個人 的には微妙。 〈病室にて〉1ページの一発ネタだが最初は意味がわからず、何度も読ん で「あ、そういう意味か」と納得した。うまい小噺だ。 〈震えて眠れ〉はホラー。隙間からなにかが除いているという強迫観念の 話。短編。追い詰められていく心理を描き、中篇にしあげればよかったのに、とい う所。余談だが、著者の友人、谷山浩子の歌である「王国」に「震えておやすみ、 ぼくの腕の中」という歌詞があるが、そこからタイトルを取ったのかな? 〈空白のかたち〉見たことないが映画で「メメント」とかいう、記憶をす ぐになくしてしまう話があったと思うが、それと同じ話。97年に書かれている が、こっちが早かったのかな? ただ、アイディアだけで終わってしまっている感 が強し。もったいない。 〈非時の香の木の実〉は時間繰り返し物。卑劣な心理はうまくかけている が、突然グロになるのがよくわからん。いい意味でオチが読めて、読んでいるとき ドキドキさせたが、しかしオチの理由が曖昧でがっかり。 〈チェス殺人事件〉天才碁士、牧場智久シリーズ。なんだが、そもそもこ のシリーズはキャラ造形に失敗していると思う。全部読んだが、面白いと思った話 がなかった。囲碁に知識も興味もないからかな? 〈メニエル氏病〉酉つ九シリーズ。元が作中作のシリーズなので、本気と も冗談とも取れない話だ。単品で見ると、微妙な話。 〈銀の砂時計が止まるまで〉著者唯一のSF、バーミリオンのネコシリー ズ。はっきり云って、この人のSFちっともうまくない。ただ作者はSF好きらし いので、まあ可哀想な話です。 〈白の果ての扉〉激辛カレーを極める話。題材選びがおもろい。身近で興 味をそそられる。なかなかよかった。 〈フォア・フォーズの素数〉数式を駆使した数字遊び。あるいは小説と呼 べるような代物ではないが、これはよかった。数字遊びの面白さがダイレクトに伝 わってくる。その虚しさと無意味さを指摘してオチとするのもよかった。 余談だが、この短編集全13編を収録しているのだが、わざわざ再録をひとつ加 えてまでこの数にしている。たしか第一短編集「閉じ箱」も全13編だった。著者 の師匠である中井英夫の「トランプ譚」にあやかっているのかもしれない。四冊の 短編集を出したら、一冊にまとめるつもりなのかもしれん。いずれにしろ、第一か ら第二までに十年くらい経っているので、死ぬまでに完成するかどうか…… ■ パラレルワールド・ラブストーリー 東野圭吾 長編ミステリーのラブストーリー添え、みたいな。 いや、面白かったんですよ? 入りもうまいし、記憶改編の科学的な説明もうま い。展開もうまいし、ことに中盤のだれがないのもうまい。凡庸ではあるが、主要 人物たちの葛藤もわかる。うまい。 が、結局はその凡庸さが好きになれない。 オチがいまいちなのもまた。 もともと、おれは記憶喪失物に弱いというか、わりと安易に興味をひかれるのだ が、九割方は「なんだこの程度か」と思うのよねえ。これもそれでしたる ■ 火車 宮部みゆき なんか社会派ぽいミステリー長編。 ここ数年の小説界で売上、知名度、メディアの露出とすべてにおいて一番脂がの っているのは、宮部みゆきか京極夏彦か、といったところだと思う。模倣犯で宮部 みゆきが頭ひとつ抜けた感じかな。なにぶん京極は作風的に売上が頭打ちだと思う し。映画の興行もいまいちっぽいしね。 その点、宮部みゆきは現代物ミステリーが基盤にあるだけに売れる売れる。その うえ作風も手広くSFからファンタジーまで書いてゲーム愛好者でもあったりす る。さらには異常にいっぱい賞をとっている。数えあげるとオール読み物小説新人 賞でデビューしてから、日本推理サスペンス大賞、日本推理作家協会賞、吉川英治 新人文学賞、山本周五郎賞、日本SF大賞、毎日出版文化賞特別賞、そしてご存知 直木賞と、まあよくもまあこれだけとりもとったりと感心したくなるくらいとって る。 その点が逆にいかがわしくてあまり手にとってなかったわけですが。 で、そんな宮部みゆきの本をはじめて読んでみたわけですが。 うまい。 おそろしくうまい。 人間に対する洞察力、難解に過ぎない的確な比喩、邪魔にならない適度な警句、 ともすれば退屈になりがちな、足でする調査形式を飽きさせずに読ませる絶妙な構 成力(まるでタマネギを剥くようにするりするりと核心に近づいていく。そしてそ の中心にはしみじみとなにもない空白があるのだ)。 脇役の一人一人にまで人生を背負わせ、それが読者に重荷にならず、なによりも その視線は人々の愚かさを指摘しつつ、しかしそれを責め立ててはいない。それが 人だと、ただその視点で書かれている。これは女性作家ならではのものだと思う。 テーマもうまい。十年以上も昔の作品にして、クレジットカードからはじまり消 費者金融につながり、やがてサラ金へといたる自己破産をもってきている着眼点が まずうまい。「まるでたいしたことなどないかのように」「自分の金を引き出すよ うに」「気軽にかっこよく」金を貸しだす消費者金融のやり方は、十年前との非で はない。これは個人の問題でもあるかもしれないが、同時に教育の問題でもあり、 社会の問題であり、ある意味公害ですらある、と作中の老弁護士は語る。だれも子 供たちにクレジットカードとの付き合い方を教えていないのがいけない、と。 いつの時代も、だれだって夢を見る。昔は叶えるか諦めるかだった。いまは一時 的に叶えたような気持ちになれる方法がある。それがカードであり消費者金融であ り、かれらを責める強さが自分たちにあるのかと作者は問う。渇きに耐えかね海水 を口にする漂流者を笑う権利がだれにあるのかと云う。 傑作、といってもいい作品だと思う。 ……と、べた簿めしといてなんだが、かといって宮部みゆきのファンにはならん し、この作品がそんなに好きなわけでもないし、次の作品を読みたいとかはあんま り思わなかったなあ。あ、いや、なんかいまぼくの頭の中がカラッカラに枯れ切っ てるってのも原因だと思うんだけど、なんていうか、嫌いになる要素もないけど、 好きになる要素もないというか。 ぼく、ダメな子なんです ■ 墓地をみおろす家 小池真理子 なんかホラーげな長編。ていうかホラー。 上のほうに書いてある駄作ホラー「死の影」のあとがきに「名作・墓地をみおろ す家に挑戦するつもりで書いた」みたいなことが書いてあったので、どれ見比べて やろうかいの、と思い読んだ。 そして微妙だった。 いや、「死の影」に比べるといいよ? 断然いいよ? 作者のもつ技量が違うと いうか、人々の生活感のたしかさが段違いというか。 でもさあ、いや、なんというか、この題材自体がそんなにおいしいものじゃない というか。 だって「引っ越したマンションがなんかいわくありげ」という話でしょ? そんで結局オチは霊でしょ? いくら細部を丁寧に書けても、それは面白くなる話なのか? ちなみにほとんど同じお話に栗本薫の「壁」がありますが、これもまた到底ほめ られた小説ではないのですが、できはどっこいどっこいでしょうか? 前半はむし ろ「壁」の方がいいです。ただ、壁は後半の霊能者の語りがにんとかんとも……で したからなあ。 こっちの方はねえ、全体的にねえ、なんというかねえ…… いや、やっぱりどう考えてもこの題材でいい作品は書けないよ、うん。リアリテ ィ以外に強化できるところがないもの。 ホラーというものには、どこか異世界や異形に対する憧憬が必要なんじゃない か? と、なんとなく思う日々。 ■ くくり姫 佐々木禎子 ホラー長編。 くくり姫ってのは「菊理媛」と書き「首括り姫」って意味なんだってさ。そし て、てるてるぼうずの歌は「明日晴れにしてくれよ。そしたら色々いい目見せてや るから。でも晴れにならなかったら首切るからな?」という歌なんだって。 つまり、まあ、そういう話。 なにを考えているのかわからず、行き当たりばったりに人を殺してはてるてるぼ うずのような格好にして首を吊らせるシリアルキラー・シンジのキャラ造形は、わ りかしベタ気味ではあるが、うまい。時々とても優しかったり冷静だったり無邪気 だったり、そしてそういうところが怖いのは、うまくやっていると思う。ところど ころにうまいシーン、ホラーらしいキモイシーンもある。 が、どうも小さくまとまってしまっている感がある。で、凡作くさい。 まあ、ホラーってのはシーンごとのきもさこわさがあればいいような気もしない でもないので、これでもいいのかもな。っていうか、おれ、ホラーに対する理解が 薄いねん。 なんかさ、ホラーって、オチがさ、2、3パターンしかないよね。 恐怖の根源(敵、悪魔、怪物、狂気、外在するものでも内在するものでもなんで もいいが)との対峙がホラーの基本で、そこでどんな恐怖(仮にこれを吉川的に闇 と総称しよう)を描き出すか、というのが、ともかくホラー作家の考えることであ り、すべてである。「リング」はそれをビデオテープに求めたし、「パラサイト・ イブ」はミトコンドリアに求めて成功した。 闇のバリエーションは無数にあって、だからホラーのネタは尽きない。いつまで も愛好される。わけなんだが、そのパターン自体は少ない。ボキャ天の採点表のよ うに、X軸とY軸で分類できる。すなわち「外在する闇、内在する闇」と「世の理 のうちにある闇、ない闇」 ごめん、言っている途中で混乱して自分の説が激しく揺らいだのでパス。 と、ともかく、ストーリーは忍び寄る闇との出会いから戦い(あるいは逃走)を 経て、エンドを迎えるわけだが、オチをパターン分けすると、 1・闇を打ち倒し(逃走成功し)日常へもどる。 (ないし、倒したと思ったら生きていた) 2・追い詰められ、とうとう闇に殺される。 3・闇を倒した、と思ったら、闇に取り込まれていた (ないし、自分こそが闇であった) ま、近年の基本は3ですかね。2はひねりがなさすぎだし(ゆえに短編とかはこ ういうの多いね)1は普通すぎる。 3は、ジェイソンを殺したらジェイソンになっちゃった、呪いのビデオをばらま くハメになっちゃったとか。シリアルキラーを追っていたら自分がシリアルキラー になっちゃった的な話とかも3か。デビルマンにおける飛鳥了というか、シックス センスというか、あと悲しみの時計少女とか、ま、そういうのもありだな。 まあ、実際、3が一番が納得いく形になるわけだが。 で、あとは 4・よくわからないけど、なにもかもが不明瞭なままに勝手に終わる こういうのもあって、これはただぼくの理解力が足りないのか作者がオチを考え ていなかったのか、永遠にわからないことではあります。ただ、うまくいくと最高 にあとあじのわるい、冷めない悪夢のような話にもなるよね。つまり、あらゆる道 理を拒否するわけであるから(恐怖とは道理の外にあるもの。しかし、あまくまで 離れすぎず、ギリギリ外にあるものが望ましい)ドグラ・マグラなんかは4な気 分。でも、失敗すると、もにょるよね。とってももにょるよ。 で、なにが云いたいかというと、この小説は4でした。 いい意味でか悪い意味でかは、君に任せる ■ 人形遊び 篠田真由美 ホラー。短編。 前にどっかで、読んでもないのに篠田真由美をくさした覚えがあるので、読んで みた。(長編を読む気力などない) で、どうでもいいなあ、と思った。だからどうした、というか、なんというか、 文章的には普通でアイデア的にも普通で、まあだから普通の話で、この人の文章世 界というか、味というか、そういうものがいまいち味わえず、まあこういう人なの かな、とか思った。売れそうな文体に近いのに、永遠に売れない人。そんな気がし た。 ■ Uターン 森真沙子 ホラー、短編。 恐怖のポイントがわからない。なにに恐怖して欲しかったのか? 細かいディテールを埋めることはできているくせに、肝心要の部分がぼやけてい る。技巧のみで書かれてしまっている感あり。その技巧もたいしたことがないわけ だが。 上記三作、すべてアンソロジー「ゆきどまり」所収なんだが、まさにプロが依頼 されて書きました、という感じで、中途半端にテクニックはあれど、中身が薄く、 よくない。アンソロジーとしても、共通テーマがホラーというだけでは散漫にすぎ る。 やはり編者や監修者が有識者でなければ良質のアンソロジーは無理か。 ■ 風葬 北方謙三 長編ハードボイルドだど。 は、ハードで、ぼ、ボイルドなんだな。 んー、シリーズ物なんだか一発物なんだがわからん。 昭和三十五年あたりが舞台で、その空気はそれなりに出ているし、ハードでボイ ルドな雰囲気も悪くない。が、それだけかもね。 主人公・高樹の男らしさに痺れなければさして見所はないかなあ。 親友との交情が中途半端だったから、最後の盛り上がりがいまいち。もうちっ と、ああこの二人は親友だったんだなと思わせるエピソード、ないしセリフがあれ ば良かったんじゃないかなあ、きっと。つまり、どうせしめっぽい話なんだからも うほんの少しくらい泣きを入れてもいいんじゃないか、と。タイトルの風葬ももう 少しうまくいかせたんでないか? まあ、プロだな、と思う。そつがないな、とも思う。でもそれだけかな、謙三た んは。ま、ハードボイルド自体があんまり好きでないんだがね ■ 冬こそ獣は走る 北方謙三 なんかハードでボイルドな長編。 えーと、なんだこりゃ? 作者のマスターベーション全開? なんかかっこよさげなセリフやシチュエーションが連発し、ハードボイルドなの で激しく殴り合いなどしながら、意味もなく女ができたり別れたり、もしかして無 内容とか? 土建屋という設定は、あまり見たことないだけに好印象だったのに、ストーリー があっちゃこっちゃに行ったあげく、どこにも行かなかった。 もう、ホントに北方の謙ちゃんはいいや。 なんつうかこう、主人公が渋カッコいいだけでは物語は成り立たないよね? ■ 非情の掟 大藪春彦 ハードボイルドというかピカレスクというかアクションというか。 非情すぎます。 殺しすぎです。 そしてそれ以外にストーリーがないです。 いったい作中で何人殺し、何人強姦し、何回拷問され、何人拷問したのか。 圧倒的なリアリズムと非常識的なシーンの数々。 いったいこの作者はなにを考えているのかなあ、と素直に思った。 ■ 新宿鮫 大沢在昌 長編刑事小説(って表紙に書いてあるもん) まあ、アクションありありの刑事物ミステリーでなんていうか説明要らないだ ろ?新宿鮫だよ新宿鮫。あれだよあれ。眠らない街・新宿だよ。いや「不夜城」と はちがくて(ぼくにも区別はつきませんが)。 ベストセラー的な臭みはたっぷりですが、正直、わりと面白かった。ベストセラ ー的に面白かった。 中身はもう「元キャリアでありながら現場組におとされた警部・鮫島はヤクザも 上官も恐れぬ一匹狼」という時点でなにかを察して欲しい。 話はそれますがね、これの映画が十年位前につくられて、それの主演が真田広之 だったのですが、ちょうどこの頃あたりからですかね?なぜか真田くんがワイルド キャラになっていったのは。 おれさー、べつにファンじゃないんだけどさー、やっぱりジュリーに乳首なめら れてた昔から、真田くんはばっちり受けキャラだと思うわけよ? だってもともと 線の細いタチじゃない? ちょっと骨ばってて。気のせいか? 「高校教師」のと きも脆弱なノイローゼ気味の新任教師だったし。 それが、なんですか?陰陽師では芦屋道満だ?ラストサムライで侍役だ? 強そ うでカッコいい真田くんですか? ちゃんちゃらおかしいですよ。真田くんはね、 こう、ある程度力があるはずなのに、さらに強大な力に打ちのめされて屈辱を受け る、そんな役割がおいしいんですよ! ワイルドでカコイイ真田はすっこんでろ! それもこれも新宿鮫あたりがいけないんだ! ……と映画を観もしないで思っていたのですが(そもそもぼくはちっとも真田く んを応援してなどいない)さて、これが原作を見てみると、わりとちゃんと真田く んであった。ガンバってジョギングしちゃってからだつくってたり、一匹狼ぶって るくせに実はポエジーなところがあったり、しまいにゃハードゲイの犯人につかま って拷問はおろか強姦されかかってたりと、とても真田くん的な役回りでした。 まあ、真田くんのことはどうでもいいとして。 で、まあ、わりとシリーズ物として普通に面白かった。ただ、思い込みの激しい 刑事オタクが事件を撹乱するのは、物語的にはとても面白くなっていたが、あんま り収拾もついていなかったような? 面白みはあったが必要性はうすかったかな? みたいな。 あー、あとねー、なんつーか、恋人が非常に魅力的にかけてはいるんですが、ど うにも男性読者向けすぎるというか、ありていにいうと作者の自己満足ぽいという か、なんつーかかんつーか。 そもそもさあねこの恋人がNOKKOにしか見えないわけですよ、レベッカの。 だって、ロックバンドのボーカリストで、小柄で胸がでかくて、ライブでは汗だ くになって全身でおどって、作詞なんかもしてて、タンクトップにショートパンツ で、で書いてる詞が「Get away みんなは言う 早く立ち去ったほうがいい こ こは街のどん底さ 泣き叫ぶ声 夜ごと夜ごと(中略)But stay here 幸せじ ゃなきゃいけないなんて だれにも決めてほしくない」だなんて、レベッカの劣化 コピーっぽい感じだし。 いや、だからね、べつにNOKKOがわるいわけじゃないんだけどね、確かにある面で は彼女は美人だし魅力的だとも思うけどね、なんつーか、濡れ場とか、NOKKOを連想 すると萎えるというか…… ま、面白かったんじゃない? ■ RIKO〜女神の永遠〜 柴田よしき 長編ミステリーの刑事物。 横溝正史賞受賞作品。 よく考えれば横溝正史賞の作品は一冊も読んだことがなかったが、事実とても横 溝正史的な作品だと思った。全体的な通俗性とか、ダイナミックで粗の目立つスト ーリー展開とか、とても正史的。審査員のなんちゃらが「あまりにも通俗的すぎ る」と否定的な態度をとったそうだが、おまえ、だったら正史はどうなんだと激し く問い詰めたい。正史は通俗、そこがいいんじゃねえか。ご高尚な作品が好きな奴 はすっこんでろ。 ストーリーは、主人公の警部補・リコは警視庁のエリートだったが、かつて上司 と不倫関係にあり、それが最悪のかたちで露見したために現場組に左遷され、かつ 逆恨みから同僚にレイプされ、職場ではあしざまにあることないこと罵られ、不倫 相手には裏切られ、そうした様々なことから性的に倒錯し、年下の部下と肉体関係 を結びながら同僚のバイセクシャルとも関係をもつ女性。男性が輪姦されるレイプ ビデオの実態を追ううちに、事件は連続誘拐事件かに連続殺人事件へとおよぶ。警 視庁との合同捜査となり、かつての上司、同僚と再会するリコは、彼らとの憎愛と 性愛を経て、新たな関係と昇華しつつあったが、事件の魔の手はリコ自身にも及ん でいき、やがて犯人は意外なところから現れる……という、なんというかとてもわ かりやすくけれん味のある話ですな。 結局、犯人が主人公の関係者であるあたりに、とても正史的なご都合主義を感じ た。 まあ、ことに正史的だと思ったのは、犯人の最終的な動機が「警察組織に対する 復讐」であり「弱者である女として、強者である男性への復讐」であったあたりか な。 「隔離社会の澱み歪みの底に棲む個人が、怨嗟のうめきをあげて襲い来る」とい うのがぼくの正史小説の犯人像であって、かれらの叫ぶ泥臭いねばっこい「何故な んだ何故俺が苦しまねばならんのだ」というヘドロのような叫びと錆びついた鉈の 鈍い輝きは適度ににがい読後感を残してくださりマス。 まあ、そこまではいっていないが、ともかく犯人の逆切れ的な過剰防衛による復 讐はもう基本ですよ。 いったいなにをいってるんだかわからなくなってきたが、まあ、そこそこ面白か った。 めんどくさいからそれでいいではないか。 ■ 戻り川心中 連城三紀彦 なんか大正ロマーンというか昭和ロマーンというか、そんな感じの短編集。 ぶっちゃけ面白かった。ジュリーのアルバム「女たちよ」を流しながら聴きたい 感じ。 藤の香……色街で起こった連続殺人事件の話。色街とそこに住む人々の描写がよ く、しんしんとつもる雪のように心にしみていく静かな語り口もいい。特に代書屋 の姿は印象深い。まあ、それだけといえばそれだけのお話だが。 桔梗の宿……また色街の話。また連続殺人事件の話。わりかしベタではあるが、 妙に太宰的な主人公の繊細さと、幼い遊女・鈴絵のキャラ造形は見事。おれも退屈 そうにうちわの柄をかんだり、真っ暗な室内で花火してみたり、桔梗の花びらを二 階から散らばらしたりされてみたいっつーの。 桐の柩……よくわからんが、兄貴分の命令で女を抱き、その後で兄貴分に抱かれ るという、やたら倒錯したシチュエーションがとってもJUNEチックですね。べつに どっちもホモじゃないしね。 戻り川心中……二度の心中の後に自害して果てた歌人の真意を追う話。文章的に はほかの作品よか好きじゃないが、このテーマはいい。歌人になってはいるが、こ いつが太宰先生のような気がしてならない。ネタバレバレでいえば「太宰先生は陰 鬱な性格で陰鬱な人生を送っていたから陰鬱な名作を残したわけではなくて、陰鬱 な名作を書いてしまったので、それの評価をあげるためにわざと陰鬱な人生を送っ たんだよ」ということで、作品を読み解くのに作者の人生を追う文学の読解法につ ねづね疑問を抱いているぼくとしては、この皮肉は痛快である。また、作品のため に自分の人生すら平気で捨てる姿は、芸の怖さをも思わせる。優れた作品は時に人 を殺すのだ。 ■ 十三の黒い椅子 倉阪鬼一郎 長編ミステリ。 実験作にして失敗作、ですな。 構成は面白い。中身が架空のアンソロジーになっていて、すべて架空の作品を仕 上げている。さらにその作品群をとりまく作家たちのメール、日記、掲示板のやり 取りが間に挿入され、一冊のアンソロジーとそれにまつわる事件に関する長編、と いう形になっている。 ネタバレバレでなお云うなら、アンソロジーの作中作が入 っている長編、というかたちの作中作が入っている長編、というかたちの作中作が 入っている……×α…… つまり幾重の入れ子構造になっているメタ小説で、まあつまりドグマグ系だ。 形式自体は嫌いじゃないんだけどな。架空の作家ごとに文体を変え、作中作それ らしく見せようとしているのはわかるんだが、どうにもこの文体の変化がな……。 まずくはない。それなりにできてはいる。が、書けるというだけで物にはしていな いと云ったところか。 また、どの文章も根本的に、才に頼み文に溺れている感が漂っている。つまり作 者が一人で悦に入っている。 作中にちりばめられた暗号の数々も、まあよくやったものだとは思うが、で、だ からどうしたの?といいたくなるようなもので、そもそも暗号なんかを施した時点 で、「読者の現実感を揺さぶる」というメタ小説の本来的な楽しみが薄くなるし、 結果、本来あるべき、本を閉じた後の「現実が虚構のつながりであるような感覚」 が一切なく、まあごにゃごにゃしてうまく云えないので簡単にまとめると、形式だ けは見所はあるが、中身はドグラマグラのデッドコピーにしかならなかった作品、 と云う感じ。 こういう作品を連載でやろうってのがそもそもの間違い。 失敗するべくして失敗した、ということで。 ■ 内宇宙への旅 倉坂鬼一郎 長編……いや、中篇かな? ミステリアス・ホラーSFだそうです。 この作者の本を読むのは二冊目だが、とにかくたしかな力量と雑学の広さ深さ、 そして無意味としか思えない文章遊びと企画だおれ感に満ちあふれている。 私小説風の書き方はそれなりに読みやすく虚実の交え方も絶妙でよくできている と思う。そのうえで文章にしこんだネタは不自然でないかたちでちゃんともりこま れている。問題は、そこまでの労力をさく必然性がまったく感じられないことであ るが、この辺が感心はしても「へー、あっそ」で終わってしまう要因であり、つま りは物語全体が「だからどうした」テイストに包まれてしまう要因かと。 オチの部分、意味がわからない。なにか意味が隠されているのだろうとじっくり 文を追い、深読みしてもさっぱりわからない。おれがバカだからであろうか?だと したらむかつくことではあるし、意味がないのならやはりむかつくことではある。 この作者の普通の小説を読んでみんことにはなんとも云えぬのう。 まあ、変な話だった、と。 ■ 死の影 倉坂鬼一郎 ホラー長編。 つ、つまんねーーーーー!! たとえうっかりでも、こんなつまらん作品かいちゃう奴に用はない。 んじゃ、そゆことで。 ■ 点と線 松本清張 長編社会派ミステリー。 社会派といえば松本清張。というわけで、はじめて読んでみたわけですが…… ……なんか読む前と読んだあとのイメージがまったく変わらんな。 良くも悪くもイメージどおりの作品だった。 好きなタイプの作風ではないのは確か。 まあ、社会派だなあ、と。 ■ てのひらの闇 藤原伊織 なんかハードボイルドっぽい社会派っぽい長編ミステリ。 なんか見切り発車してないか? と思ったら雑誌連載だったらしく、きっと見切 り発車だったのだろう。 そんな感じの出来。 ハードボイルドは好きになれると思うのに、どうもいい作品に出くわさないな あ。 うぬぼれが強すぎてなんとも。 文章のうまさのわりに話のつまんない作者なんだよな、この人。 ■ お葬式 瀬川ことび ホラー。短編集。 表題作「お葬式」は、死んだ人の身体を遺族が親戚一同で食べる一族の話しだ が……これって、ほとんど同じ話が筒井康隆にもあったよな? これで受賞させて いいのか? 軽妙な文章は悪くないが、ただそれだけという感じがする。笑える段 階に至らなかった。肝心な人肉のうまさとか料理の仕方とかがほとんど描写されて いず、筒井康隆より二段くらい落ちる。あっけらかんとした文章はいいが、もっと 具体的に書くことによってもっと不気味で、しかも明るい話になったろうに。 「ホテルエクセレントの怪談」「萩の寺」は凡作、というか駄作の部類。読みや すいのはいいが、内容が無さすぎる。なんていうか、軽めの文章でもいいが、それ でもどこかぞっとするところがいと、ホラーとしては辛いのでは? 人の死や恨み 呪いを笑い飛ばすほどのテンションでもないし。 が「十二月のゾンビ」「心地よくざわめくところ」は、まあまあ良かった。スト ーリーは無いが、異常状況とそれに反したあっけらかんとした文章が効果的になっ ていた。怖がらせようという気がまったくないところが、逆にホラー的な面白みに なっているかもしらん。 うーん、様子見でもう一冊くらいは読んでみてもいいが……読んでみたいほどで はないなあ。ま、気まぐれで。 ■ クリムゾンの迷宮 貴志祐介 なんか読んでしまった「黒い家」で有名な作者のホラー。 意外にも、すっごく意外にもけっこう面白かった。 火星を模したオーストラリアの岩山地帯。その迷宮のような場所で目覚めた、幾 人かの男女。携帯ゲーム機を通じて伝えられるゲームの指示。はじまるサバイバル ゲーム。その果てにある、文字通り食うか食われるかの殺し合い。 まあ、筋自体は陳腐っちゃ陳腐だ。その分、一般受けしそうではある。 よかったのは前半のサバイバル部分。舞台となるオーストラリアの気候、産物、 生物分布をよく調べてあるようで、それらを巧みに生かした、生き残るための彷徨 の部分は良かった。このような状況下で無事生き残ることができるのか?という、 文字通りのサバイバルホラー。 ところが、後半はなぜかまた「黒い家」と同じで、なんか常軌をいつした化け物 みたいな人間にひたすら追いかけられる展開になって、こうなるとわりと「ああ、 またですな」とどうでもいい感じになる。オチも、まあ落ちてはいるんだが、微妙 といえば微妙。 まあ、サバイバルホラーという形式にも楽しみはある、と知っただけでも価値は ありか。そんだけといえばそんだけ。 ■ 憑き者 ホラーアンソロ。分厚ッ。まあ、全部は読まないが。 顔 柴田よしき 関係ないが、柴田よしきって名前、どこかで聞いたことがあると思ったら「魔人 タクシー」「ジャイアンツ」で有名な(嘘)チャンピオン漫画家、柴田芳樹と漢字 ちがいの同姓同名なんだね。ジャイガンスティック! でんぱーでんぱー。 で、この作品は、またなかなか良かった。微妙なブスがひょんなことから化粧品 にはまっていき、やがて……という話で、ちょっと展開が性急に過ぎるきらいもあ るが、文章の読みやすさであまり気にさせない。とりたててうまい文章はなく、中 身が薄いわけでないのに、するりするりと読みくだせるのが面白い。オチはフレド リック・ブラウン「後ろを向くな」を思わせる、というかわりとそのもののあれ で、このオチ自体は好きだが、この話につけたす必要があったのかどうか。あと、 あのフレブラの時代なら、そりゃ購入場所、経路は限られてるし、このオチにもド キッとさせられて、そのあとで笑えると思うんだが、いまの時代ではちょっと…… 少なくとも、アンソロ本に寄稿するようなオチじゃないな。 ランブリン・ローズ 中山千夏 残念賞。 作者の趣味であると言うスキューバの魅力は十二分に伝わってくるし、それが集 約される主人公が何度も口にする言葉「海、行かなきゃならないから」は良い。狂 気が実にダイレクトに伝わる。良いのだが、話のもう方輪であるところの、植物栽 培の部分がダメ。ダメというか、悪くはないんだが、相対的に見たときスキューバ の部分に圧倒的に劣る。よって、ちぐはぐな作品になっている。 対応する作品を書けばよいと思う。植物栽培に没頭する彼女の話ね。それを書く ことで初めて、主人公の狂気も彼女の狂気も浮き彫りになると思う。片手落ち、と はこの事か。 ■ アクアリウムの夜 稲生平太郎 ミステリーチックな青春ホラー長編(なんだそのジャンルは) んむ? 面白い? 謎の奇術「カメラ・オブスキュラー」、行きつけの水族館のあるはずのない地下 室、こっくりさん、山の上の病院、蛇神を祀る宗教、霊界ラジオ、ホワイトノイズ の彼方から自分を呼ぶ声、金星からやって来た蛇人、シャンバラを記述した書 物…… オカルトチックな小道具が、惜しげもなく次から次へと投与され、しかしコケオ ドシの怪談にはならず、すべてがつながりそうでつながらない、もどかしい距離に 存在している、この不愉快感。デタラメの一歩手前の完成品。 サーカスのような小説だった。不気味で、滑稽で、実態がつかめない。受験ノイ ローゼみたいな話ともいえる(って、ほめてない?) 三分の二は面白く読めた。が、最後の三分の一が微妙だった。まずくはないんだ けどね。微妙。 読めれ、というほどではないが、読んでもいいんじゃない?って感じ。 あと、解説の篠田真由美の小説は読まないだろうなあ、と思った。なんかつまら なかったので。解説が。 ■ 少女、去りし 伏見健二 ホラー、短編。 少女愛、倒錯性、近親姦、そういったものをあまり深く考えずに書かれたものっ ぽく、それゆえにエロティシズムに色がない。中途半端にクトゥルー的に解釈させ るくせがついているためか、手癖で書かれてそれで終わってしまっている。 まあ、なんだ、青森物語かいとけって感じ。 |