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読書感想文アーカイブ 乙一


■ 夏と花火と私の死体

 ホラー。中篇。  作品自体は佳作。それなりに書けてるし、それなりに読ませる。オチも、読める とはいえ、ちゃんとしてる。  特筆すべきは作者の年齢で、現在おれと同い年の24、受賞時にはなんと17 で、執筆時には16だったという。  この作品を、いまのおれが書けるかといえば、書けない。16ならにばなおさら だ。  いま現在の実力が知りたいな。新作を読んでみるか。 

■ A MASKED BALL

 中篇。ホラー? サスペンス。  まいったな。これは間違いなく良作だ。  軽い筆致で書かれながらも、うわっすべりにならない文章は、たしかにいまどき の高校生を描写している。  便所の落書きを軸とした匿名のコミュニケーションは、サスペンスの題材として ばっちり。わきやく一人一人の扱いまで丁寧だし、細かい伏線もしっかりはられて いる。  犯人がなぜか妙に人間離れしているのはちとアレだと思うが、しかし現実非現実 の境目としてぎりぎり決まっていなくはない。なにより動機がいいじゃないか。  はっきりとは書かず、適度に(あくまでも適度に)ぼかした書き方もいい。特に V3の扱いは秀逸だ。  このクォリティの作品が書けるならば、なるほど、たしかにこの人は本物なんだ ろうな。少なくとも、小説家ではある。若者感覚で書け(じっさい若いんだが)、 しかしうわっすべりせず、きちんとオチのある話が書ける。  けどまあ、作風自体はたいして好みじゃないんだよな。まあ、これは好みの問題 なんだが。しかし、この先作風を広げていくのならば、いい感じではなかろか?

■ 天帝妖狐

 中篇。ホラー。  ありがちな筋。気負いすぎて雑な構成。オチが中途半端。  ケチはつけられる。  けれども、これは、傑作だ。少なくとも、傑作の萌芽がある。  怪人となってしまった男のもつ哀愁。けっして湿っぽくならず、泣きを入れず、 しかしこれほど悲哀のただよう表現はすばらしいの一言。この作者で、初めて感情 表現がうまいと思った。  それと、田舎の街の情景描写。まるで住んでいるかのような、田舎の臭いが確か にした。  異端者へ向ける優しくも残酷な視線。救いがなく、しかし悲劇ではない物語。  江戸川乱歩の初期の短編と同質の臭いだ。あるいは、乱歩の後継者の一人になれ るやもしれぬ。そう思わせるものがあった。  正直、すごいやつかもしれない。

■ SEVEN ROOMS (オムニバス「殺人鬼の放課後」より)

 設定と、死体の流れるどぶ溝の描写はキモくて良し。  ただ、その描写、状況の面白さだけしかなく、オチとかそういうのはわりとなさ げ。まあ、納得のいく説明がついたら、逆につまらなくなりそうだが。  悪くないが、ほめられた作品じゃないな。

■ 死にぞこないの青

 ホラー? サスペンス? 長編。  いかん、もしかして、おれ乙一のファンかもしれん。  非常に根暗で、優しく、臆病で、ずるく、でもずるくなりきれず、いらないプラ イドを保つことも捨てることもできない、ガキのダメさを描ききりやがった。  新卒の先生にいじめられる、ちょっとだけ頭がよく、ゲームが好きな、やや肥満 の少年。コロコロを楽しみにし、ビックリマンのチョコを捨てるのに抵抗を覚える 少年。これは、同い年だということもあるんだろうが、とにかく自分のことに思え てならん。なにせ、おれも教師にはあまり好かれてなかったしな。そういう意味 で、この作品を過剰に評価してしまっているきらいはある。あるがしかし、そうい う点から見ても穴のない作品であるということは、素晴らしいというか、とんでも ない。  拘束衣に包まれ、隻眼で口の裂けた「アオ」は、少しゲーム的すぎる感もあった が、ほかの部分のリアリティと相まって、心地よく気持ち悪い。  うまい、と思ったのは、このいじめる先生が、嫌な奴にかかれていながら、気持 ち的にわかるところ。新卒でみなに期待され、意欲が空回りして疎まれる。それを 避けようとする気持ちからの、生贄としてのいじめ。  デビュー作からそうだが、サスペンスの書き方がうまい。なんていうか、いつも そうなんだが、かくれんぼをしているときの、鬼が自分の隠れている場所のすぐわ きを通り抜けていくような、微妙なすれちがいを多発させているだけのような気も するんだが、それが自然でうまい。  しかし、なんでいつもオチは微妙なんだろうな。いや、まずくはないし、むしろ うまくまとめているんだけどさ。好みの問題かね。中篇くらいだとうまくきまるん だが、長編になると軽すぎるきらいがある。  いずれにしろ、傑作だ。

■ 暗いところで待ち合わせ

 長編。サスペンス。  いかん、もう完全にただのファンだわ、おれ。  これは、もう傑作だ。  なんていうか「盲目の女の家に隠れ住む男」というだけの大筋からして「屋根裏 の散歩者」的に乱歩チックで、もうおれのツボ。さらに男も女もお互いに気づきな がらなにごともなかったかのように生活するとはもう。悪趣味でいやらしく、なの にそこに向ける視線の優しさときたら! 実に乱歩的! 主人公の二人はその筆致 がいじましいくらいに健気で気が弱くて、たまらんものがある。なんでこんなに気 が弱いのか! 「屋根裏の散歩者」「盲獣」「芋虫」「押絵と旅する男」「孤島の鬼」あたりが個 人的乱歩のヒット作なんだが、乱歩は異形の存在に対する優しさと憧憬をもってい るようなところがあって、それが悪趣味なだけに終わりがちな作品を、ただの猟奇 物ではなくさせている、と個人的に思う。以前、同作者の「天帝妖孤」を読んだと きにも思ったのだが、どうもこの作者にはそういった異形への優しさがある。だか ら、気持ち悪くて、しかも暖かい。  その「天帝妖孤」のときにも使われた、男と女の視点が交互に入れ替わるという 手法を使っているが、前作では形式倒れに終わっていたこの視点変更を、実にうま くサスペンスの一要素として機能させているのにはうならされた。成長していやが るよコイツ。中盤、思わず「ありがとう」と云ってしまった直後に視点を変更され たときは「やられた」と思った。なんかそう思った。悔しくすらあったものだ。  むう。ただ、なんていうか、読みにくいんだよな。いや、文章の密度とかはちょ うどいいと思うんだが、なんていうか、なんていうかな。もともと、変に人を選ぶ ようなところのある書き方だしな。まあ、それは欠点であると同時に長所なんだ が……む。  とにかく、一通り読んでみることは決定。

■ 失踪ホリデー

短編「しあわせは子猫のかたち」長篇「失踪ホリデー」の二作。  「しあわせは子猫のかたち」は、「ゴースト ニューヨークの幻」の乙一版と云 ったところか。つまり、ありきたり過ぎる話。が、地力で読ませる。作者の文章が 好きな人にはこのうえもない傑作、そうでもない人には凡作だろうな。個人的には 間をとって佳作。  「失踪ホリデー」は、良作かな。  文章が面白いな。気の抜けた文体でギャグともそうでないともつかない文章が続 く。この作者の持ち味が出てる。筋というか、題材は面白い。家の中に住んだまま 狂言誘拐。まあ、かくれんぼだね。かくれんぼがよくよく好きなのか。  が、ちと退屈だな。構成的にはうまいんだけど、退屈。オチのどんでん返しは良 かったが、読み味は爽やか過ぎるかもしれん。いつも思うが、伏線の回収の仕方は 天才的だ。  なんか、作者が楽しんで書いてる気がしたな。一作目は半分フロック、それから しばらくは少し気負いすぎてる。で、この辺りの作品(コレが四冊目だっけな?) で楽しんで書き始めて、最近のはいい意味で好き勝手にやってる感じがするな。

中間総括。

乙一は、これは同時代性だろうな、やっぱ。筆力やアイデアはあるが、それより なにより感覚が同調しやすいのが良い。自分のわかる範囲で、背伸びをせずのびの びと書いているのが良い。が、もう少し作風を増やさないと、行き詰まる気がす る。というか、正直、飽きてきた。飽きてきたが、いざ読みはじめると引き込まれ る文章が見つかる。惜しい。もう一伸びだ。             

■ 階段 (「悪夢制御装置 ホラーアンソロジー」より)

 おしい!  最後の10ページまではすごい良かったのに、詰めで大失敗! なぜに?  小心者で、家族に威を示すことで自尊心を満喫することしかできない父親。善良 でありながら、夫に恭順することしかできぬ母。父におびえ妹に加えられる虐待を 黙殺するしかない自分。その暗い家庭の象徴としての、崖のように急な階段。そこ での事件をきっかけに崩壊する家庭。  いや、まあ、なんていうか……わしの世代にはこういう家庭環境って多いの?こ こまで派手ではもちろんないが、この父親母親のだめ具合はなんか心当たりがいろ いろと……  特に父親の行動描写がとてもリアリティあふれるダメさでいい。自分のおどしで 娘が階段から転げ落ちれば、捨て台詞を吐いて逃げる。その夜には気持ち悪いくら いに猫なで声で優しくなり、そして翌日にはすべて忘れて(忘れたふりをして)い る。実に小心者でダメだ。ダメダメだ。とてもよい。  な・の・に・最後で急に化け物じみた暴力野郎になってしまっているので、ぶち こわしだ。短編のためか、安易に落としてしまっているのがイタイ。こいつはわり と安易で読み味爽やかなところに落とす癖があるんだが、こういう話でそんな爽や かにせえへんでも……。  しっかし、いつも貧乏生活の描写がうまいのは、貧乏だったからですか? 金持 ちの描写はド下手だったしな。やっぱ貧乏だったんだな。貧乏は正しい! のか?    

■ きみにしか聞こえない―caling you―

 「きみにしか聞こえない」「傷―kizu/kios―」「華歌」の三編収録。 「きみにしか聞こえない」は、まあ、一言でいえば友達のいない寂しがり屋の電波 さんの話なんですが、えーと、電波? まあ、なんていうか、こう、甘ったるー。 ぬるー。  なんつうか、世にも奇妙な物語のぬるい話って感じ。友達いないもの同士が架空 の携帯電話を使ってテレパシーするって、なんかこう、そりゃ電波過ぎるだろ。そ れで簡単に仲良くなられるのも相当萎える。なんつうか、アイデアのわりにはスト ーリーが安易に過ぎるかしら? 「傷―kizu/kios―」は、あ、うん、えーと、もったいない。ていうか、話がちっ とも解決してねえ。短すぎたな、確実に。この設定、キャラをもとに、長編一本し あげてちょうどいいかもしれん。長編はながいか? まあ、倍の文量は欲しかっ た。設定だけで、ストーリーに動きがなくキャラに葛藤が足りないのう。でなけれ ば、もっと黄昏た話にするか……でもそれは作者の文章によるものだからな、望め まい。 「華歌」……と思ったら、これはめっちゃ黄昏てるよ。山奥の病棟、事故より一人 生き残り死を思い続ける主人公、それぞれが傷を負っているがために、話し合うこ ともできない入院者たち。愛されているがゆえに自殺した少女、その足元に咲い た、少女の顔をもつ奇妙な花……花の歌う子守唄。  文章はあくまでおさえた静かな筆致で、淡々としてすらいる。しかし、そこにあ る感情は決して穏やかではない。だからこそ、悲しい。  傑作だ。  なにげにさりげなくミス・リーディングしているのも憎いものですね。  

■ さみしさの周波数

 短編集「未来予報」「手を握る泥棒の話」「フィルムの中の少女」「失われた物 語」収録 「未来予報」……あー、企画倒れ。ストーリーと呼べるほどのものがない。いや、 ないわけじゃないんだが、薄い。小道具の使い方がうまい奴なんだが、それだけで 話を作ってしまった感じ。微妙。うなの苦手なCIH(ちょっと・いい・話)路線 だしな 「手を握る泥棒の話」……なんかよかった。ダメで間抜けで小気味良い話。だから どうしたといえばそれまでだが、いいんじゃないかな、こういう話も。 「フィルムの中の少女」……また企画倒れ? 特殊な形式でかかれているが、あん まり意味がなかった。オチも微妙かと。ただアイデアは悪くないかと。だから企画 倒れ。 「失われた物語」……よかよか。事故で右腕の触覚以外、すべての感覚を失った男 の話。触覚によってのみ感じられる演奏。そうとう鬱でヒキコモリな話だと思う が、これはいがった。うな印をあげよう。

■ 優子

 読み忘れてた。短編サスペンス?  人形を人間と思い込む男の話と思いきや、実は語り手の方が狂ってて人間と人形 の区別がつかなくなっている話だった。  ネタは一発ネタだが、ばれやすく、短編でやるもんじゃないかな、と。最後の方 のネタのふりかたとか考えると、もっといろいろつめこんで長編にした方がよかっ たかと。っつっても、このネタじゃあよっぽどうまくやんないと「人形館」どまり か。  解説によると、綾辻行人は、この作品で「やっぱりかれは本物だよ」と語ったそ うだが、まあ、やっぱりつまり人形館どまりかと。

乙一は、相変わらずで相変わらず。肩の力を抜いた作品の方ができはよろしい。 ミス・リーディングさせることに関してはピカイチ。だましているように見えない 文体ゆえに、うっかり気づかない。まあ、普通に面白い。

■ 石ノ目

 短編集。「石ノ目」「はじめ」「BLUE」「平面いぬ。」収録。 「石ノ目」は、芸風を広げようという姿勢には好感が持てるが、出来はいまいち。 主人公の心情がいまいち理解出来ない。変質的な人間なのかただの鬱病なのか芸術 家なのか、まったくわからん。ゆえに、物語のために動かされている感がある。 が、標準は割っていない。悪い出来でも標準を割らないのはたいしたものだ。 「はじめ」風の又三郎系の話。ふらりとあらわれ、そして去っていった少女、あれ は幻だったのか? といった系統の話だが、最初の最初から「幻覚だ」と明言され ているあたりが面白い。それがオチにつながっていればなおよかったが、そこまで は無理か。「いつも野球帽をかぶっており、年中着ているセーターの袖口は鼻水で ガビガビ」と描写される幻の少女はじめは、可愛いとも美人とも書いていなかった が、きちんと美少女している。おもしろかった。 「BLUE」できそこないの人形の話。切ねえ話だな、おい。芸風を広げるためか、舞 台を外国にしていたが、それはさしてほとんどまったく意味がなく、正直どうかと 思うんだが、しかし中身は良かった。できそこないのBLUEもおよそ可愛げのない少 年テッドも、実にうまく書けている。可愛げがなくて可愛い。最後の方でいい話に しすぎている感があるが、まあ、よかろう。それくらい甘ったるい方がいいのかも しらん。良作。 「平面いぬ。」は、題名どおり、ど根性ガエルの犬版。ただし踏んだら張り付いた のではなく、彫った刺青が動き出した、とするあたりは、カエルよりは現実的?  読み終わった直後はまとまっている気がしたが、思い返すと雑然としている。終わ った気分にさせる書き方に騙されたんだろう。まあ、雑然としているのもこの人の 世界観の味ではあるし、いいか。佳作。  全体的に見て、佳作。過渡期の作品だな、という印象。  あとイラストが恐ろしく低い水準で書かれている。オタ絵じゃないだけになおま ずい。なんだこれは。

■ Z00(「キネマキネマ」より)

 「キネマキネマ」所収、短編。ホラー。  どうもやっぱりこいつは発想を基本的に逆転させてるよな。恋人を殺して、その 記憶を封印し、いもしない犯人を探しさ迷い歩く男……という本来ならばオチにな る部分を冒頭で明かし、そのうえで物語をキチンと構築している。見事。  鮮やかな短編。が、どうも綺麗にすぎる気がしてさして好きではない。  しかし、いつの間にかホラーの文章がかけるようになっているな。デビュー作の 時はきわどいラインだったのに。まあ、普通に良作。

■ 暗黒童話

 ホラー。長編。  ああん、微妙。雑に書いたもんだな、こりゃ。  最初の100ページくらいはとてもよかったんだが、どうも初の長編と言うのも あって、かなり見切り発車してるな。おかけでうまく風呂敷を畳めてない。納得の 行かない部分も多々ある。  が、ホラーとして見たときは、十分なホラーな文章になっている。特に犯人側の 視点の気持ちの悪さ、悪趣味さはいままでになかったもので、なるほどねここまで 悪趣味のできる奴だったかと感心した。途中で挿入される暗黒童話集「アイのメモ リー」も切なく気持ち悪く後味が悪くて良い。  記憶喪失関連の話の処理さえうまくできていれば、傑作にもなりえたかもしれな いのにな。あとちょっとだけ文章を詰めてさ。  しかし、雑とは云ったが、個人的に雑さと云うのはマイナス要素ばかりでもな い。自然、勢いも生まれるし、不思議と読みやすさにつながることもある。元々、 雑な文章はきらいじゃないのだ。  まあ、色々考えて、佳作、といったところか。

■ 神の言葉

 なんかミステリのぶ厚いアンソロジー所収。立ち読みだからわすれた。  短編。  いやあ、これはなかなかなかなか。  小説すばるが初出というから、いままでよりも遠慮がなかったのかもしれん。す がすがしいほどのアン・ハッピーエンド。  主人公設定は、なぜか云った言葉がすべて真実になるという能力をもった少年、 という、ストロングスタイルといいたくなるぐらいの真っ向勝負の能力もの。わか りやすく云うとジョジョもの。が、わずか20数ページの作品なのに世界を滅ぼす ダイナミックさに惚れた。  人の首が次から次へとぽとりぽとりと落ちていき、その情景がまたたくまに全世 界にひろがるさまは圧巻だったし、すべての人が滅んだ首でいっぱいの世界で、い ままでと同じ世界の幻覚を見続ける部分は、作者の描写の特性「リリカルでぬとぬ と」をまざまざと感じる名場面。最後の一文も決まった。  それにしても、気のせいかこいつは年々心が病んでいってるような気がするのだ が、気のせいか?

■ GOTH

 連作短編集。これが売れて乙一はわりかしメジャーになった感じだね。 「暗黒系」これ単品では物足りないが、主役二人の紹介話としてはしごく適切。主 人公のしずかな変態性も森野の美少女ぶりもアピール十分であった。 「リストカット事件」ささいな伏線がにくい。主人公の変態ぶりがすばらしい。 「犬」叙述トリックがわりと一瞬でわかったのは興醒めだったが、まあまあ。 「記憶」変態同士の純愛といったおもむきですな。いずれ捕食する獲物を愛でるよ うな主人公の森野に対する視線がキモ愛しい感じです。オチはわりとわかったげ。 でも落とし方はよいよい。 「土」サイコさん視点の話なのでおいしい。素材のおいしさを殺さなかっただけで も見事。それだけと云えばそれだけ。イメージの美しさと残酷性の調和は見事。 「声」やられた。なんでこんな簡単な叙述トリックにひっかかったのか、自分でも 分からないくらいにやられた。ここまで気持ちよくやられるとすがすがしい。トリ ックとかオチとかなしにしても、十分に面白い中身だったので、叙述トリックされ てることに気づかなかった。ひとえに、いままでの話の積み重ねで、主人公の行動 をしらずのうちに期待していたんだろう。連作でなければ使えないやり方だし、締 めとしてはうまい作品だ。  総合すると、いままでで一番売れる匂いがする作品であり、品質も良好。良作。  ただ、ヒロイン森野のイメージがガンパレの石津、あるいはおねティーの森野苺 と激しくかぶるのですが、これ系を流行らしたのはだれですか?


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