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読書感想文アーカイブ SF・ファンタジー系


■ 愛のひだりがわ 筒井康隆

 SFっぽ。  良作……だが、ちょとさびしい。
 「旅のラゴス」「馬の首風雲録」系列の壮大な物語と、「時をかける少女」とか のジュブナイル系の中間にあるような話。出稼ぎに出たまま行方しれずの父を探し て旅に出る主人公、愛が、その旅の途上で出会ういい人たちと、ろくでなしたちの 話。探していた父が、すれちがいで家にもどってきているあたりは、「青い鳥」を 踏襲した展開なんだろうが、借金をこさえて人生の敗北者になって最低の人間にな った父親に絶縁を叩きつけて終わるので、あんまり幸せではないかもね!  随所に出てくるろくでなしの描写は、さすが筒井先生、リアリティがあってとて もアレでよい。全体的に、できはいい。
 ただ……アレだ。なんか「旅ラゴ」や「馬の首」に比べると、最後にロマンがな いんだよなあ。その辺がマイナスポイント。  一言で云うと、筒井先生も老いたな。良くも悪くも。

■ おれの血は他人の血  筒井康隆

 なんかよくわからないけどピカレスクな感じの長編。  現代版座頭市って感じで、あとは筒井先生の定番で、こう、いつも通りにしっち ゃかめっちゃかに。  ハードボイルド風のタイトな文章は小気味よく、ヤクザどもにただようどことな い惨めさは筒井康隆独特のもので、まあ、いつも通りに面白かったかな、と。

■ 驚愕の荒野  筒井康隆

 ホラー短編集、なんだけど、表題作以外は以前に読んだことある奴ばかりだった ので無視。
 で、驚愕の荒野。
 面白い。
 どこかゲームじみた和風ファンタジーの世界は、それだけで特異で興味深く、そ のうえにメタ的ないりこ構造になっているあたりがいかにもいかにも。  ただ、オチはあるけどない。

■ ウイークエンド・シャッフル  筒井康隆

 短編集。  筒井康隆のドタバタですよ。  それ以上でもそれ以下でもないですよ。  面白かったけど、べつにいまさら内容云々を語る必要もないと思いますよ。

■ ある生き物の記録  小松左京

 ショートショートがわさわさといっぱい。  おセンチなSFキター!という感じ。  普通におもしろかった。SFの一般的なイメージは小松左京がつくっていたのだ な、と再確認した。
 というか、日本のSFは、実は「小松左京」というジャンルであった、みたい な。  まあ、面白かった。べつに特筆するようなものもないけれど。

■ なんと、清浄な街 神林長平

 SF。短編。  いつもの味わい。それなりに面白い。  いつもの神林長平だった。  特筆すべきほどのことはない。

■ 小指の先の天使 神林長平

 SF短編集。  神林の新作キター
 期待を裏切らない味わい。が、予想を越えてもいない。妥当なところ。  どうもわしはこの人の作品、SFではなくファンタジーとして楽しんでるっぽ い。世界観や語り口がよい。相変わらずなにを言っているかわからぬが。

〈抱いて熱く〉は、人間同士触れ合うと死んでしまう荒廃した未来世界での話。小 さなビンの中で育てた瓶詰めの魚などの小道具からしてなんか萌える。でもオチは 考えてなかったっぽい。
〈なんと清浄な町〉は再録なのでパス。
〈小指の先の天使〉いいファンタジーだ。肉体を捨て意識だけとなった人間たち と、それを拒み文明を退化させた人間。お互いの狭間にいる黒衣の番人。ライトシ ーンのセプテンバーコウと同類の、ふらふらとしたのんきな中年男が萌える。
〈猫の棲む処〉猫のソロンが萌える。猫の描写が上手かった。
〈意識は蒸発する〉いまいち意味はわかりにくかったが、とにかく萌える。
〈父の樹〉よくわからない怪物体になってる父が萌える。
 結論として、萌え小説、と。  それは嘘としても、なんか良かった。正直、バカなのでよく意味がわからないと ころが多々あったが、とにかくよし。

■ 蒼いくちつげ  神林長平

 SFホラー長編。  昔、読んだことがあるような気はするのに、ぺらぺらめくってみても覚えてない ので、再読。
 記憶に薄いことを納得。  どうも締め切りに追われていたのか、会話・設定に独特の妙味はちゃんとでてい るが、作品が消化しきれていない。というか、打ち切り風味。主人公、OZを登場 させるまでにページをかけすぎ、規定の枚数が近づいていたんだろう、そこからの 展開が早い。早すぎる。OZ自身はいいキャラなのに、それが生かしきれてなかっ た。やっつけ仕事、とまではいわないが、締め切りに追われた、いかにも仕事然と した作品なので、読むときはさらりと読めるが記憶に残らない。
 まあ、これがのちにいろいろと形をかえてできたのが良作「永久帰還装置」のよ うな気もするし、しょうがないか。プロだもの。お仕事もするもの。  プロってのは、お仕事をこなしつつ、自分のスタンスも守らなきゃいけないから 大変だよなあ。

■ ドリームアウト 野阿梓

 SF? 短編。  これって落ちてる?  レモンシリーズだけど、いつもと設定が違うのかしら? 中世?
 眠り姫と夢の世界を題材に相変わらずタンビ〜な世界が繰り広げられておりま す。  文書と設定はいいと思うんですが、ここで終わっているのがなんとも理解できな い。落ちてます? なんかはじまったばかりのような。  野阿先生は理解できません。

■ ミッドナイトコール  野阿梓

 連作ホラー。あと、やおい。
 SF的なメタファーで耽美させる芸風は、野阿梓ならではのものだなあ、と久し ぶりに思った。あれだけ機械的でメタリックでデジタルな単語たちが、なぜちゃん と耽美になってるのか、読んでいても謎。あといきおいでメタファーとかいったけ ど、メタファーの意味を正確に理解していない自分が好き。ぼくはムサファーしか 知りません。まあ、調べたら暗喩のことらしいけど。
 さておき、レーベルのことを考えてか、野阿先生にしては異常に読みやすい。い つもこれくらい簡単に書いてくれると、バカなぼくは嬉しい。

 ミッドナイトコール……第一話。文体以外はわりと普通のモダンホラー。霊の話 からはじまり、理性的にそれを現実に解体させ、途中でエロスをいれつつ、また霊 の仕業のように思わせ、しかし現実的な解答がふたたびしめされ、やれめでたしめ でたし……と思いきや、最後の最後でまた霊になり、結局どちらともつかず読者に 想像させながら終わる……という、なんというかプロの仕事。なんというか、そつ がないがそれだけともいえる。
 コールバック……第二話。第一話とおなじ事件を、同じ時間軸で、べつの視点か ら描く。こういうの好き。さりげなく書かれていた一話の会話の一つ一つの、もう 一つの思惑が明かされていく展開は見事。的確な心理描写はやおいものとしても合 格点。科学とオカルト、現実と非現実のあいだを揺れ動く物語は、傑作というには 粒が小さいが、なかなかの佳作といったところか。ホラーとしては、もう少し現実 を侵食するような怖さが出たほうがよかったとは思うが。
 ラストコール……最終話。ぶちこわし。完全にオカルトにシフト。唐突に黒魔術 でエクソシストしてます。特にストーリーもないみたい。だからオチもあんまりな いみたい。黒魔術の知識とか描写はすごいような気もするが、内容がないような気 がしてならないですよ兄さん。

■ あした 新井素子

 SF。短編。  おちてないじゃん!  これ、全然おちてないじゃん!

■ ハッピーバースディ 新井素子

 なんだこれ? ジャンル分け不能。長編。  すっごく変なはなしだった。
 ホラーになるはずの話を、ホラーで終わらせずにひねりを加えているのはさすが だが、そのひねり方が、変。おかげでなんともいいがたい小説になってしまった。  いつもの新井素子文体なので、読みやすいような読みにくいような。   ただ、新井素子は変な人だなあ、この先どんな変なの書くのかなあ、という気に させる一品ではあったので、ある意味必読。この人は、アイディアじゃなくて、感 性がおもしろいんだな。

■ 二分割幽霊綺たん 新井素子

 おい、ちょっと、「たん」が漢字変換できないんですけど。だるー。もうひらが なでいいやー。  新井素子はわりとファンなんだが、ぽろぽろと読みこぼしがある。これもその一 冊。

 最初の100ページは、かなり面白く読めた。もう唐突に出てくる設定のデタラ メなこと(ほめ言葉)。  仮性半陰陽の主人公、美少女吸血鬼、異次元とつながっているアパート、巨大モ グラとモグラの女王様、あなぐらいっぱい数万匹のみみず、出だしの方で死ぬ主人 公、しかもシチューにされて友達に食われる主人公、たてまっぷたつに分かれた幽 霊になる主人公。
 たたみかけるように最初の100ページに詰めこまれていて、こりゃお得だね!  の、わりに、わりと途中からぐだくだで、ちっちゃくまとまっていてぐんなり。  うーん、あれだね、この当時ね、色気づいていたのが悪い方向に作用してしまっ ているよね、うん。旦那と付き合っていた頃に書いた話だしさ。

 ぶっちゃけ、女性作家ってさ、わりと男の趣味で左右されるところって、あるよ ね。新井素子の男の趣味ってさ、あんまりよくない……いや、よくないわけじゃな いんだが、良すぎるというか……
 誠実で、二枚目じゃなくて、あんまり強くなくて、不器用で、優しくて、善良 で、馬鹿じゃなくて、でもあんまり利口じゃなくて、誠実で、誠実で、誠実で、ま あ誠実で、簡単に云えば、ともかずさんみたいな男がタイプみたいなんだよね、彼 女。つまり、凡庸なつまらない男が。
 だからして、あんまり、男がストーリーに絡んでくると、面白くないというか、 男いらないというか、どうでもいいというか。その辺を自覚しているのか天然なの か、恋人はいるけど登場しない、あるいは脇役、という話が多いよね。
 だらだらとわき道にそれまくったのでとっとと結論を云うと、まあ、残念賞だっ たかな。
 コメディやドタバタで自作「……絶句」を超えられないのがな。かといってあれ は反則連発の一発ネタだしな。

■ 悪夢の住む家 上下  小野不由美

 ホ、ホラー小説、な、なんだなあ。  近年ぼくの頭の中で評判が急下降中、小野先生の少女小説だよ。  いや、しかし、これは、なんだ。  つまらなかった。

 無駄にページ数が多く登場人物が多いのはこの人の手癖として許すとしてもだ。  全体的に安すぎる。シャレんならんですよ。まさしく一山いくらの売文家と周囲 に思われるようなやっすい内容。  基本は心霊ものであるが中途半端にミステリーっぽくもあり、結果、京極夏彦を 頭悪くした感じの作品になったような。いや、そんなこと云っては京極夏彦に失礼 だが。

 ともかく、ホラー特有の安さと、少女小説らしい安さが融合した、とびっきりの 安さ。ついでにイラストレーターも安っぽい。ていうか、少女小説なのにエロマン ガくさい。そう云えばいま思い出したが、このイラストレーター(ちなみに小林瑞 代という)はるか昔にウイングスに漫画載ってて、その時にも(やたら一人だけや おいくさくなくてエロくさいなあ)と思ったりしたことがあったなあ。敢えて云う なら萩原一至の絵を女が描いたらかくもあろうか、といったような。

 あと、十二国記シリーズでは、その設定上中国風の名前になっていたからごまか されていたが、どうにもネーミングセンスがよろしくない。まあ、十二国記でも主 人公が中島陽子であったり、微妙さが漂っていたが、この話はあれだろ。ダメだ ろ。

 列記すると、  渋谷一也(主人公、十代にして博士である天才、かつサイキッカー兼サイコメト ラー。傲岸不遜のナルシスト)
 谷山麻衣(元気が資本の活発女子高生)
 安原修(舌先三寸の一人少年探偵団)
 滝川法生(軽いノリの長髪ボウズ)
 原真砂子(美少女礼霊能女子高生)
 松崎綾子(ボディコンシャーマン)

 設定の安っぽさはおいておくにしても、どうにもキャラの名の字面、口にしたと きの語感、性格との親和性、どれをとってもひどいもんだ。特にシブヤカズヤっ て……変な韻踏んでるし……。適当につけた名前ならともかく、シリーズ物の主人 公にこの名前って……
 ま、まあ、ともかく。先生はどうかと思うなあ、この御本。

■ ゲームマシンはデイジーデイジーの歌をうたうか  小野不由美 水玉蛍之丞

 ゲームエッセイ。92年〜95年の連載なので、その辺のこと。 前々から疑問ではあった。微妙なやおいテイストをかもし出し続けていた小野不 由美は、はたしてやおいっ子なのか、それともただの天然なのか。しかし天然であ の麒麟システムは思いつくものなのか?(十二国記の世界では神様に選ばれたカッ プルが王様として治世をしなくてはいけない。しかしこのカップルは男女のみでは なく、男男、女女の場合もある。二人は一蓮托生であるが、絶対に性的な干渉はな い、というシステム。のような気がする)  で、このエッセイを読んで結論がでた。

 こいつ、やおいっ子じゃねえか! ファミコン版ファイエムをやってナバールを 愛する時点で全てが知れるというもの。しかもアニメオタクでもあるようだ。うっ かりすると劇場版スト2とか見に行ったりしてるし。いいのか? それでいいの か? ガンダムのアムロ一筋みたいだし。本当にそれで良いのか?   しかし、意外なことにどうやらカップリング主義ではなく、単体のキャラに惚れ るタイプらしい。なるほど、だからやおい風味のキャラを量産しながらやおい風味 の話にならんのだな。

 それはともかく。  ゲーム好きだったんだな、この人。そう云えばこの時代、やたらゲーム好きを標 榜する文化人がいたりしたもんだなあ、とか思い出した。この人の旦那の綾辻もF Fが出るたびにファミ通に寄稿したりして。その親友の我孫子武丸はかまいちの夜 の原作者だし。そう考えるとこの人がゲーム好きなのは必然か。いまでは宮部みゆ きが微妙な推薦文を寄せたりして(おれの)失笑をかっているぐらいしか印象がな いなあ。つまり、まあゲーム業界もすっかり景気が悪くなったんだろうな。あの頃 のゲーム好きたちはいまもゲームをやっているのかね?

 内容に関してだが、まあ、可もなく不可もなく。つらつらと読めるが夢中になる わけでもなし。笑うわけでもなし。エッセイストの実力としてはやや低めと評価せ ざるを得ないところかのう。  ただ、連載時期が、個人的にゲームが燦然と輝いていた時代であったため、懐か しさもあってわりと楽しくは読めた。特に「サターンがどこも売り切れで手に入ら ない、サターンマダー」状態なのは、今読むとおかし哀しい。サターン……売り切 れていたんだね……。  水玉の絵エッセイ(ていうかどう表現すればいいんだ? あの芸風は)も懐かし いのう。意味もなくところどころ出てくるライルとカブキとドモンに愛。そして 哀。

■ かしょの幽夢 十二国記 小野不由美

 シリーズ。短編集。  いつもの奴です。  まあ、相変わらずクォリティは高い。高いけど、カタルシスがない。  どうにもキャラの名前とか固有名詞が覚えられないから、読むたびに混乱する。 中国風なのがいけないのか? とも思うが、三国志は憶えられるしなあ。まあ、漫 画じゃないから顔と一致しないのがいかんのかもしれん。
 まあ、この作品は世界観を補強する話としては十分及第点。けど、単品で一冊の 本としてみるには、非常に不十分。新規読者と古参読者を双方納得させねばなら ぬ。シリーズものとはかくも難しきものよ。

■  一人で歩いていった猫  大原まり子

 SーFー。中篇。  デビュー作なわけだが、つまりわかったのは、この人はある程度完成された状態 でデビューした反面、なにひとつ現在まで成長していないんだな。よくもわるくも 本格SF。ロマンチシズムと壮大な世界観。そして電波な会話と設定たち。  とにかく話が飛び飛びでよくわからない。  面白そうなのに、話を理解させてもらえない、そんな感じ。

■ SFバカ本

 SFアンソロ。自らうたっている通り、バカっぽ。  でも親父くさ。下ネタの使い方が親父くさ。  なんか古臭いので途中で放置。

 ・怒りのザーメン 梶尾真治
 くだんね。ていうか読んだことあったな、ずいぶん昔に。わっすれてた。  え、可もなく不可もなく。普通に下品でそれなりに面白くないこともない。   

・馬鹿SFはこうしてつくられる 火浦功
 みじかっ。  まあ、これも可もなく不可もなく。   

・恍惚エスパー 高井信
 あー、なんか古っ。まあ可もなく不可もなく。   

・スーパー・リーマン 大原まり子
 意味わかんね。この人の文章って、わりと電波。  神林長平、新井素子らと同時期の若手SFの(いや、もう全員おっさんおばさん だが)中核の一人だと思うんだが、ほかの二人はわかる、というかファンなんだ が、この人いっつもわけわかんねえんだよな。だからこれもどうかと。

■ 旅人の願い 森岡浩之

 SF。短編。 良作。
 ようは、下品で皮肉のきいたテンポのよい会話を楽しめるかどうか。  アイデアも悪くなく、オチもいい。けど、構成がまちがっている気がするが。  「星海〜」だけの人かと思ったが、そうでもないんだな。売れそうな感じの人。 てか、売れてんのか。

■ 夢の木が接げたなら 森岡浩之

 作者の顔がとっちゃんボウヤ。以上。  いや、以上じゃなくて、えーと、著者唯一の短編集だーね。わりとハードなS F。
 ライトノベルばっか書いている印象があるが、デビュウがSFマガジンなだけ に、こっちの方が本職っぽい感じ。

 表題作「夢の木が接げたなら」は、言葉という概念に関する考察を中心とした、 SFマガジンらしい秀作。が、長編の書き方で短編のアイデアを書いたら、結果的 に中篇になりました、みたいなちぐはぐ感がある。
「普通の子供」は、まあそれだけの話って感じ。
「ズーク」、特殊な環境で育ったがために、普通名詞の概念がなく、固有名詞しか ない子供の話。が、物語に発展しそうなのに、なにも起こらずに終了。アイデアは 面白いと思う。
「個人的な理想郷」一言で云えば、ネットアイドルに恋人が出来たので失望して自 殺する話。媒体はパソコンではなくテレビになっているが、現在のネット全盛、個 人HPが乱立し、ヒキコモリが多発するという時代を先見したような作品。94年 発表らしいので、まずまずの先見性だにゃあ。
「スパイス」珍しくサスペンス性の強い作品。天才で変態の純愛の話ととれなくも ない。良作だにゃ。
「無限のコイン」キャッシュが存在しなくなった未来、ある日突然、世界中の人間 の預金残高が∞になり、という話。みんなが金持ちになったはずなのに、逆に食う にも困る事態に。面白い。
「夜明けのテロリスト」無限のコインで示された機械と人間の主従逆転を、さらに 押し広げた話。なんか壮大になった。まあまあまあかな。

 全体的に見れば、良作か。意外にも、小松左京あたりの正当後継者なのかもしれ ん、と思った。題材の扱い方が。

■ 月と闇の戦記2 守護者はぶっちぎり 森岡浩之

 えーと、なんてジャンルだこれ? ファンタジーか? まあそれはよしとして、 長編シリーズの第二巻。(前シリーズをいれると3巻目)
 このシリーズの一冊目「月と炎の戦記」は、なにげにライトノベルでは屈指の一 冊完結型の良作だと思っている。派手さも目新しさもないが、テンポもよいし一冊 のわりにスケールもでかい。それでいて遊びもあるし、さりげなく民俗学にも造詣 が深いところがうかがえるし、日本神話の解釈も的確でかつわかりやすい。なによ りラストの数行が、さすがSF作家、夜空のロマンを感じさせる終わり方で、爆発 力はないが作者のたしかな力量がうかがえる作品であった。
 その、前作の主人公コンビ、月読命と楓が現代にあらわれて、ってな話だが、な んかいかにも連載物という感じで、テンポがよくそれほどまずい文があるわけじゃ ないのだが、この作者の作品にしては中身の密度が薄い。濃い内容を簡略な説明と 皮肉の利いたセリフでにやりとさせながらすらすらと読ませるのがこの作者の特色 だと思うんだが、台詞回しのよさしか残っていない。が、わき役のさりげない生か し方は心得たものであり、幽霊のコンや敵の伏見、教官高寺などちょい役だがいい 味出してる。
 いかんせん根っこの話がそんなに楽しそうじゃない。敵対する神ってのがどの神 様なのかは気になるが(最初、女性だから天照かと思ったが、敵は闇の神らしい し、じゃあ大禍津日神かなと思ったが、それは災いの神で闇ともちがうし、部下の 名前から建御雷かとも思ったけど闇とはまったくちがうし、闇=黄泉ということで 伊弉冉尊かとも思ったけど、そう云えば前作に出てきてたし、そもそも日本神話で 闇の神ってなんぞや?よく考えたらまったくしらねいや、日本神話。水蛭子、じゃ ねーよな)あとはそんなに気になる話しじゃないなあ。

 まあ、かるく読めるので読み続けはする感じ。でも発刊ペースおせえんだよな。  表紙で無駄にパンチラしているのはどうか? ていうか、前作の挿絵は小菅久美 だったのに、この草河遊也とかいうのになったけど、この人、スニーカー系で女性 読者も多少は範疇に入れた作品でやたらよくみるが、わりとどうでもいいんだよ な。さして嫌悪感を抱くほどでもないが、目にとまることもない。まあ、毒にも薬 にもならないタイプだなあ。じゃあ、いいんでしょうけどね。

■ 死に急ぐやつらの街 火浦功

 SF。ハードボイルド。  連作短編集。
 寡作な作家でマニア評価が高いらしい。はじめて読んでみているわけだが……  あー、微妙。  テンション高く、テンポもいいんだが、どうだろ。軽すぎるか?  ハードボイルドだが、あくまでアニメのハードボイルド。

■ 俺に撃たせろ 火浦功

 ハードボイルド・コメディ。中篇?長編?中途半端な長さだ。
 なるほど、テンションが高い。  薄い本だとはいえ、40分くらいで読破できた。文が薄い本ってのはいくらでも 読んできたけど、ここまでテンポがいいのははじめてかもしれん。  とるに足らぬ文に見えるんだが、言葉選びのセンスだな、ほとんど説明文がない にもかかわらず、状況がたやすく理解できる。短い文でシチュエーションを想起さ せるのがうまいんだ。この辺は見習いたいところ。ギャグは、まあ微妙。  けど、シリアスな話よりも、この話のほうがカッコイイような気がしたのはなぜ だ?  うむ、もう一、二冊、読んでみるか。

■ 奥様はマジ 火浦功

 ギャグ。短編集。
 表題作「奥様はマジ」は、筒井康隆チックだな。この枚数、この改行ペースでよ くもまあキャラが浮かび上がるような話を書くものだと感心はする。「父カエル」 ダジャレで一本つくれるのもたいしたものだ。「てなもんや忍法帖」未完の連載作 品。未完であること自体をネタにしているのはよかった。
 なんか、うまいのかもしれんが、わざわざ読むようなものでもないような気がし てならないんだな。しかしここまで無内容な文章ばかり書けるのはエライ。油断す ると、意味つけたくなるもんな。

 どうでもいいが、花見沢Q太郎※1のイラストはちょっと……
  ※1花見沢Q太郎
 エロ漫画家。ロリ属性。ほっぺたに謎の赤丸がついた絵ばかりを書く。  個人的にぢたま某※2と絵柄が区別つかない。
  ※2ぢたま某
 エロ漫画家。ガイナックスアニメ「まほろまてぃっく」※3の漫画版作画。  尿漫画の第一人者であり、油断するとすぐ放尿させる。  
  ※3まほろまてぃっく
 最強兵器であったロボットが、機能停止するまでの最後の一年間を凡庸な少年の  メイドとして過ごす、というストーリーの、キモオタのキモオタによるキモオタ  のためのドラえもん。ぶっちゃけマルチ※4。兵器+メイド+ロボット=萌え、  という風雪マタタビンガー※5なみにわかりやすい狙いがたまらない。
 「エッチなのはいけないと思います」
 ※4マルチ
 数年前にギャルゲー界で一世を風靡した「To Herat」の一番人気キャ   ラ。普通の現代学園物に、ストーリーの半ばから唐突に当たり前のような顔をし  て登場する美少女ロボットなんぞに順応できる辺り、オタクの順応性の高さは半  端じゃない。いいから現実に戻って来いよ。
  ※5風雪マタタビンガー
 OVA「タイムボカン王道復古VOL2 タツノッコン王国で同窓会だコロン」  において、ドロンボー一味がつくった詐欺アニメ。宣伝文句は「メカと美少女と  パンチラ」上映時間は五秒くらい。ちゃんとテーマ曲もある(「特訓満漢全席」  収録)


■ ザリガニマン 北野勇作

 SF。みじかめの長編。  わからんかった。いまいち。 「かめくん」の姉妹作。
 のんきな日常と牧歌的な文章のうらに、壮絶で絶望的な社会背景がある、という 狙いはわかる。んだけど、なんかわからん。  途中であまりに概念的にいきすぎて、わからん。  主人公に感情移入できるようなできないような、微妙な感じ。
「いつだって後退、あとずさり。そうとも、それがこのおれだ。世界の平和を守る ためなら、人類だって滅ぼしてやる」
 という最後の方の一文はいいと思うんだが、そこまてつながる感情が理解できな い。   ところどころ面白い文章はあるが、なんかやりすぎって感じ。 読みやすくはあった。難解な設定であるだけに、それは評価できるか。

■ イカ星人 北野勇作

 SF。  なんだこりゃ? 意味がわからん。かめくんよりもザリガニマンよりもわから ん。よって、評価不能。
 本気でさっぱりわからんかった、というか、もう覚えていない。  この作者は、わからん。今後はパスだ。  なぜ三冊も読んでしまったのか……(短いから) 

■ 逃げゆく物語のはなし 牧野修

 SF。、短編。  設定がすごくいい気がする。  物語を再生するための機械である人形、その逃走。愛し合う二体の人形が再生す る、最後に混ざり合う物語。 けど文章があっさりしすぎているし、もったいない。  同じ設定でもうちょっと長い話を読みたい感じ。

■ ファントム・ケーブル  牧野修

 ホラー。短編集。
ドキュメント・ロード……糞みたいな人生、を描ききれていないから不条理なだ け。
ファイアー・マン……「ロートレック荘」と同じ叙述トリックが使われているが、 電波ったテンパッタ文章なので、フーン、といった感じ。電波ちゃんはきもくて良 し。でもきもい。
怪物癖……ちょっとアレだよね。きもいだけでストーリーがないというか。 スキンダンスの階梯……う、ううーーーーーん。試薬品の実験体になって、実はそ れが……というのはありがちで、なんていうか、どうだろうね?
幻影錠……開錠にとりつかれたピッキングの天才、というのまではよかった が、ストーリー自体はどうも……。もうちょっと封印の鍵を開錠するのをきちんと 書いていればの。
 ヨブ式……うわ、悪趣味。下劣。スプラッタ。理由もなく嫌がらせをされ家族を 皆殺しにされる、ただそれだけの話。オチなどない! 梶一郎を下品で悪趣味でひ ねりを無くした感じ。
 死せるイサクを糧に……電波さんいらっしゃい。
 ファントムケーブル……やっほー。みんな、感度は良好かい?
 いっやー、ひさしぶりに読んだなあ、ぐろいだけのホラー。
 二、三作読んで「ああ、全部オチはないんだな」とわかっているから、ドキドキ がないよ。追い詰められる主人公たちに感情を移入する場所もないため「あっ、死 んだの?」と云う感じ。
 ただ、むなくその悪さは光っていた。よくもまあこれだけただ嫌なだけの作品を 書けるものだ。でもこれはホラーじゃなくてエログロだよね?   男が怪物にカマ掘られて、そのまま絶命、という描写が何回か出てきましたが、 よくよく気に入っているんですね? うほっ、男狩り

■ サラマンダー殲滅 上・下 梶尾真治

 SF。長編。SF大賞受賞作とか。  ダメでした。
 全三部だが、一部は、まあよかった。最初は入りにくかったが、一部終盤、ガス マンとの対決「エネル・ゲは裁けないぞ。サラマンダーは無理だ」は盛り上がって たが、その後は盛り下がるばかり。  とにかく、爽快感もなければ、さしていや気持ちも残らない。中途半端にいい奴 が多いので、困る。もっとどっちかにしてくれりゃあな。  この作者のは何冊か読んだが、もう読まないだろうな。

■ 星虫 岩本隆雄

 SF。  あーんー、まあ、凡作か。
 絶妙に読みにくい。よくわからないけど読みにくい。  前半がたるいことこのうえない。後半、星虫で空を飛ぶようになってからは、ま あまあのテンポ。しかしだるい。長すぎだ。半分くらいに縮めて書いてもいいので は?クラスメートの描写が微妙すぎる。作者がいい人なのか、いい人っぽい仕上が り。ちょっと宮崎アニメを思い出した。つまり、好きでないわけだが。  善人はなんらかのリスクを背負い、苦しんでもなお善人というのでなければ重み がない。と、思った。  微妙なラブコメ具合はなくてもよかったのではないかしらん?

■ タイムリープ 上・下  高畑京一郎

 長編の……SF?ジュヴナイル? ライトノベル? まあライトノベルか。
 なんつーか、なんだこの異常に普通な話は?  肉体的なものではなく、あくまで意識レベルにおける時間の連続性が狂う、とい う形でのタイムトラベル、という設定はまあまあ、奇抜ではないが面白い。が、す べてが異常に薄味。同じようにタイムトラベルをあくまで意識的なものとした小林 泰三の怪作「酔歩する男」と比べるとよくわかるのだが、タイムリープ現象の理由 というものがなく、それに対する考察が一切といっていいくらい欠如している。そ のため、タイムリープという現象自体を考察するSF的な楽しみはない。

 ではタイムリープという現象を要素にした、エンターテイメント作品なのかと云 うと、まあそうなのだろうが、それにしてはあまりにもキャラが薄味。主人公カッ プルはあからさまなくらいに、個性を失ったエスパー魔美と高畑君だし、友人関係 にも面白い、あるいはカッコいい、ないしはかわいい、まあなんでもいいが、特筆 すべき特徴を備えたキャラというのはまったくなく、なにかそつなく物語をこなす ために、とりあえずで配置された書割のようなキャラクターばかり。物語を円滑に 進めるためには、ときに凡庸なありきたりのキャラが必要になることは認めないで もないが、しかしSFではなくエンターテイメントとしてみるなら、キャラクター が死んでいるのは致命的以外のなにものでもない。

 ではジュヴナイル的なものなのかというと、まあそういったものへのオマージュ (むろん、時かけを中心に)を多少かんじないでもないが、(この先痛烈にネタバ レになるが、まあネタバレを恐れないぼくなので気にしない)だったら無駄にタイ ムリープのきっかけを「レイプ」などとするのは配慮に欠けるし、そもそもこれが 「殺されかけた」や「誘拐された」でもなんでもストーリー的には同じなのに、敢 えてレイプを選んでいるのだから、どうもよくわからない。むだに読者の眉をひそ めさせるだけだと思うが。犯人のキャラクター像がずさんとしかいいようがない粗 悪なものなのも、その感を助長させる。乙一クラスの変態性を、とまでは云わない が、せめて悪役に命をふきこんで欲しい。レイプ癖があるから、ムラムラと来てう っかり教え子を公園で襲うようなあほうな奴が、いままで何度も犯罪を犯していて 捕まらないなんて、意味がわからない。

 ただまあ、深みはまったくのないすかすかで、文章も読みやすくはあるがやはり スカスカだが、起承転結はしっかりしているし、テーマ自体もつまらないものでは ないので、これが二時間ドラマや舞台の原作であったり、あるいはマルチED方式 のゲームの原作であるならば、わりと味付けが容易であるし楽しめそうだ、とは思 う。  とにもかくにも味付け。薄すぎる。作者のもつ価値観だの世界観だのがまったく 伝わってこない。あるいはないのかもしれんとすら思える。文章力、構成力ともに 雑文ライターとしてならプロレベルだが、小説家としてはどうか?

■ 妖精作戦  笹本祐一

 なんかSFぽ。長編シリーズ一作目。  二昔まえくらいのOVA的な作品(たとえばダロスとかメガゾーン23あたり の)を好む層のライトノベル読者の間で、やたら名前があがる笹本祐一。で、なん となく読んでみた。  昔のOVAだな、と思った。

 えーと、文章は下手。設定は細かいが陳腐。展開ははやくてテンポがいいが、う わっすべりしている。キャラクターの感情がこれっぽっちも描けていない。よくあ る関係のキャラばっかり。テンポはいいのに読んでてだるい。古い作品なので、し かたないといえば仕方ないのだが「古い」。古いのが問題なのじゃなくて「古い」 と感じさせるのが問題。  要するに、つまらんかった。

 なにやらデビュー作らしいので、あまりひどく云うのもどうかと思うが、この人 はたしか藤川圭介の文章を婉曲的に下手だといったことがあるような話を聞いたが (正確には「いのまたさんはえらいよな。あの文章を挿絵無しで読んでるんだか ら」とかそんな感じ)いくら説経大好き文章ガチガチの藤川のケイちんも、この人 には云われたくあるまい。
 SF学園物のドタバタなら、もっとちゃんとギャグをして欲しいものだ。また、 ぶっちゃけ学園物にとって最大のスパイスは「あのころはよかったわぁ」という懐 古主義であるので、それを根本からまったく感じない人に、学園物はできるのだろ うか?

■ 大赤斑追跡  林譲治

 SF中篇。  じみー。  すべてがジミー。  悪い意味で地味ー。  いやね、これが長い話のワンエピソードならいいのよ。SF的な理論のこねこね もまあよくできてるんじゃないかなあ、と思う。というか、その辺に関しては門外 漢もいいとこなのでよくわからないというのが実情ですが、まあいろいろとやって た。いろいろと。  ただ、これだけの話をポンとだされてもねえ。つっても、こんな魅力のうすいキ ャラたちで大長編をやられてもアレですが。ええ、色々と。


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